ASDっ子の「体の困りごと」に気づいていますか?PTが伝える運動支援

子供がブロックで遊ぶ様子 不適合

すこっぴーラボ / 理学療法士ゆうだい

「うちの子、なんで体の動かし方がぎこちないんだろう?」
「ASDの診断は受けたけど、運動面のことは誰にも相談できていない…」

そんな悩みを持つ親御さんや支援者の方へ。
この記事では、理学療法士(PT)の視点から、ASDっ子の「体の困りごと」と、家庭でできる具体的な支援をお伝えします。


ASD児の80%に「運動の困りごと」がある

ASD(自閉スペクトラム症)への支援は、コミュニケーションや行動面に注目が集まりがちです。

でも実は——

📊 ASD児の約80%に、何らかの運動面の課題があると報告されています。

「落ち着きがない」「不器用」「体育が苦手」——これらは、しつけや努力の問題ではなく、脳・神経系の特性によるものかもしれません。


「体で遊ぶ」ことは「頭を使う」こと

PTが注目する「実行機能」という言葉をご存知ですか?

実行機能とは、目標に向かって行動を計画・制御する脳の働きのことで、「注意」「記憶」「気持ちの切り替え」が含まれます。

実はこの実行機能、体を動かすこと(運動)と深く結びついています

💡 体を動かしながら考える・判断するような複雑な運動は、
前頭前野(実行機能を担う脳の部位)を積極的に使います
「遊ぶ」=「脳を鍛える」ことでもあるのです。

運動の種類実行機能への効果
決まった動作の反復(体操など)動作の自動化・認知の負荷を軽減
ルールのあるゲーム抑制制御・注意の切り替え
順序がある動作計画力・ワーキングメモリ
相手のいる遊び予測力・社会的認知

今日から試せる!おうち運動遊び

🏋️ 遊び①:ヘビーワーク遊び(固有覚を整えて落ち着かせる)

子どもがバランスをとりながら遊ぶ様子
体を使った遊びが感覚統合を促します

ヘビーワーク」とは、筋肉や関節に「重さ・抵抗」をかける活動のことです。
固有覚(体の位置・力加減を感じるセンサー)への入力が、脳の覚醒レベルを調整します。

用意するもの:水の入ったペットボトル・本の入ったリュック・雑巾

  • 重いリュックを背負って10歩歩く(★★★効果大)
  • 壁に両手をついて5秒押す(3回)
  • 床を雑巾で力強く拭く(お手伝い兼用!)
  • 本やお米・洗濯かごを運ぶ
  • タオルを互いに引っ張り合う

タイミングのコツ:
・興奮しすぎているとき → ヘビーワーク後に自然とクールダウンできる
・授業や食事の前 → 集中力・着席時間が改善しやすい
・「もっとやりたい!」と自分から求める子は、固有覚が不足しているサインかも


🌙 遊び②:寝る前15分の感覚リセットルーティン

子どもが安心してくつろぐ様子
安心できる環境が良質な睡眠につながります

「寝つきが悪い」「夜中に起きてしまう」——これもしつけの問題ではなく、夜になっても脳の覚醒が下がらないことが原因の場合が多いです。

PT推奨「寝る前15分ルーティン」:

  1. 重さの入力(5分):重いブランケットをかけてゆっくり押す、または背中をゆっくりさする
  2. 呼吸(3分):「お腹を風船みたいにふくらませて、ゆっくりしぼませて」を3回
  3. 固有覚リセット(3分):「グーッ」と全身に力を入れて5秒キープ → 「パッ」と脱力
  4. 暗さ・静けさ(4分):照明を暗くして、静かな空間で親が隣にいる

🧠 なぜ効くの?(PT視点):
深圧覚・呼吸・筋弛緩はすべて副交感神経を優位にする刺激です。
毎日続けることで、脳が「これをしたら寝る時間」と学習します(入眠儀式の形成)。


「うまくいかない日」の対処法

発達が気になる子は、調子の波が大きい傾向があります。うまくいかない日があっても、それは当然のことです。

うまくいかない原因として考えられること:

  • 睡眠不足(感覚処理能力が低下する)
  • 感覚的な疲れの蓄積(学校・療育後は消耗しやすい)
  • 天気・気圧の変化(前庭覚に影響する)
  • 空腹・体調不良

📝 記録しておくと専門家への相談に役立ちます:
「今日は何ができた?できなかった?天気は?睡眠は?」
調子の悪い日は観察するだけでもOK。無理強いすると「この遊び=嫌なこと」と脳が学習してしまいます。


理学療法士ゆうだいのまとめ

  • ✅ お子さんの困りごとには神経発達上の理由がある。「しつけ」や「努力」の問題ではない
  • ✅ 最新の研究は「環境と課題の調整」が発達を促すことを示している
  • ✅ PTのキーワード:「至適チャレンジポイント」――7〜8割成功する難易度が学習を最大化する
  • ✅ 家庭でできる「ヘビーワーク」と「感覚リセットルーティン」が有効

おわりに ― 理学療法士ゆうだいから

科学は、保護者の「なんでうちの子だけ…」という孤独を解いてくれる力があります。

「うちの子がこうなのは、脳の特性としてちゃんと説明できるんだ」
「私だけが悩んでいたわけじゃないんだ」

そう気づくことが、支援の第一歩だと思います。
この記事が、少しでもその助けになれれば嬉しいです。

理学療法士 ゆうだい


参考文献

Li Cindy, Butterfield John, Wilkinson Corbett. TCF12-related bicoronal craniosynostosis complicated by a large middle fossa arachnoid cyst and developmental regression: a case report. Child’s nervous system (2026 May). PMID: 42098324.

厚生労働省. 発達障害者支援施策

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