運動会のあとに崩れる子どもたち|理学療法士が教える「行事疲れ」の正体と回復のコツ

不適合

「本番はあんなに立派に走っていたのに」

運動会が終わって、ほっとひと息。——と思ったら、次の週から朝なかなか起きられない、ちょっとしたことでかんしゃくを起こす、「学校行きたくない」と言い出す。そんな姿に戸惑っている方もいるのではないでしょうか。

「あんなにがんばれたのに、どうして今になって?」「もしかして、甘えてるだけ?」

実はこれ、行事のあとにとてもよく見られる姿です。崩れているのは”今”でも、その原因は、本番までの数週間に少しずつたまってきたものであることが多いのです。

この記事では、理学療法士の視点から次のことをお伝えします。

  • 行事のあとに崩れるのは、なぜ自然なことなのか
  • 「行事疲れ」の5つの正体
  • 回復を助ける、おうちでの過ごし方

行事のあとの崩れは「がんばった反動」

運動会の練習期間を思い出してみてください。

  • いつもの時間割が変わり、急に外での練習が増える
  • 暑い日も肌寒い日も、校庭で長い時間立って待つ
  • 音楽・ピストル・マイクの声など、大きな音がずっと続く
  • 「みんなと合わせる」「失敗できない」という緊張が毎日ある

大人でいえば、大きな仕事の締め切りに向けて数週間ずっと走り続けているような状態です。本番が終わって気がゆるんだとき、それまで張りつめていた分の疲れが、一気に表に出てきます。

つまり、行事のあとの崩れは「甘え」ではなく、がんばった量が多い子ほど起こりやすい、自然な反応なのです。

「行事疲れ」の5つの正体

ひと口に「疲れ」といっても、中身はひとつではありません。いくつかが重なっていることがほとんどです。お子さんにどれが当てはまりそうか、見てみてください。

① からだの疲れ

いちばんわかりやすいのが、からだの疲れです。長時間の練習、立ちっぱなしの待ち時間、慣れない動き。さらに、秋は日によって暑かったり寒かったりと気温の差が大きく、体温を保つだけでもエネルギーを使います。

もともと疲れやすい子、姿勢を保つのに力を使っている子は、ほかの子より早く体力の”残り”が少なくなります。(関連記事:発達が気になる子が疲れやすい原因とは?)

② 感覚の疲れ

運動会は、感覚にとって”刺激の洪水”です。ピストルの音、スピーカーから流れる音楽、大勢の歓声、人混み、砂ぼこり、日差し。

音や人の多さに敏感な子にとっては、その場にいるだけで、からだを動かす以上にエネルギーを使っていることがあります。練習期間中は気を張って耐えていた分、終わってからどっと疲れが出てきます。(関連記事:そのイヤ!には理由がある ― 感覚過敏のメカニズム)

③ 見通しの変化

練習期間は、時間割が急に変わったり、練習が延びたり、雨で予定が変わったりと、「いつもどおり」が何度も崩れます。

先の見通しが立つことで安心できるタイプの子にとって、この「予定が読めない毎日」は大きなストレスです。本番が終わっても、そのストレスはすぐには消えません。

④ 気持ちの張りつめ

「みんなと合わせなきゃ」「転んだらどうしよう」「見られている」。こうした緊張を抱えながら、子どもたちは本番までがんばっています。

大きな目標が終わったあとは、達成感と同時に、気持ちの糸がぷつんと切れたような状態になることがあります。何に対してもやる気が出ない、いつもより甘えてくる、といった姿はそのサインかもしれません。(関連記事:集団が苦手な子どもの理由とは?)

⑤ 生活リズムの乱れ

疲れて夕方に寝てしまい、夜中に目が覚める。週末の行事で起きる時間がずれる。そんな小さなズレが、翌週の朝の起きにくさにつながります。

さらに11月は、朝晩がぐっと冷え込み、日の出も遅くなる時期。布団から出にくい季節と行事の疲れが重なり、朝の支度がいつも以上に進まなくなります。

回復を助けるおうちでの過ごし方

行事疲れは、ゆっくり休めば少しずつ回復していきます。おうちでは、次のようなことを意識してみてください。

「がんばったね」を、結果ではなく過程に

「1位すごかったね」よりも、「毎日暑い中、練習がんばってたね」「緊張したのに最後まで踊れたね」。本番までの努力を言葉にしてもらえると、子どもは「がんばったこと」をちゃんと受け止めてもらえたと感じられます。

1〜2週間は「省エネ週間」に

行事のあとの1〜2週間は、習い事や週末の予定を少し減らして、エネルギーをためる期間にしましょう。「疲れているときに無理をさせない」のは、甘やかしではなく回復のための大事な作戦です。

睡眠と朝の時間を整える

国の睡眠ガイドでは、小学生は9〜12時間の睡眠時間を確保することが目安とされています。寝る時間と起きる時間をそろえ、朝はカーテンを開けて光を浴びる。この基本が、リズムを戻すいちばんの近道です。

感覚を落ち着かせる時間をつくる

静かな部屋で過ごす、ゆっくりお風呂に入る、好きな手遊びや粘土遊びをする、毛布にくるまる。その子が落ち着ける方法を、1日の中に少し入れてあげてください。ハンモックやブランコのような、ゆっくりした揺れも、気持ちを落ち着かせるのに役立つことがあります。

「いつもどおり」を見通しとして伝える

「明日からは、いつもの時間割に戻るよ」「今週は特別な予定はないよ」。こうした見通しをことばや予定表で伝えるだけでも、安心できる子は多いです。

やりがちな”逆効果”

「運動会ではできたんだから」と比べる

本番の姿は、緊張と集中で”特別な力”を出していた状態です。それを基準にすると、子どもは「いつもがんばらなきゃいけない」と感じてしまいます。

疲れを取らせようと、週末にレジャーを詰め込む

「がんばったごほうびに」とお出かけしたくなる気持ちはよくわかります。ただ、人混みや移動は、感覚やからだにとっては新たな刺激。ごほうびは、家でのんびりできる内容のほうが回復につながる子もいます。

崩れたことを叱る

かんしゃくや行き渋りを叱られると、子どもはさらに緊張を高めてしまいます。「疲れてるんだね」と、まずは状態に名前をつけてあげることから始めてみてください。(関連記事:子どもに無理させてない?脳が「学べなくなる」境界線とは)

相談の目安

次のような様子があるときは、ひとりで抱えずに相談してみてください。

  • 2〜3週間たっても、行き渋りや睡眠の乱れが続いている
  • 運動会に限らず、行事のたびに大きく崩れる
  • 食欲が落ちる、おなかや頭が痛いといった訴えが続く(この場合は、まずかかりつけの小児科へ)

行事のたびに崩れる子は、次の行事に向けて事前にできる準備があります。「次の発表会が心配」「学校にどう伝えたらいい?」という方は、すこっぴーラボの公式LINEからもご相談いただけます。

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まとめ|崩れは「がんばった証拠」

  • 行事のあとの崩れは、がんばった反動として自然に起こるもの
  • 正体は、からだ・感覚・見通し・気持ち・生活リズムの疲れの重なり
  • 回復のカギは、省エネ週間と「いつもどおり」を取り戻すこと

本番でキラキラしていた姿も、終わってから崩れている姿も、どちらもお子さんががんばった証です。「よくがんばったね、ゆっくり休もうね」。そのひと言が、いちばんの回復薬になるかもしれません。

参考にした資料

この記事を書いた人:ゆうだい(理学療法士)/発達に特性のあるお子さんの運動・姿勢の支援を専門にしています。

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