[運動シリーズ]うちの子、ボールう投げが苦手…。そんな時に役立つ支援方法

発達

「ボール投げがうまくできない」「キャッチボールが苦手で楽しめない」
そんな悩みは、小学校・中学校の先生や保護者の方からよく聞かれます。

体育や遊びの時間、「どうしてうちの子だけうまく投げられないんだろう」と心配する方も多いのではないでしょうか。

実は、ボール投げは単なる“腕の力”だけでなく、全身のバランス・感覚・動きの協調など、いくつもの「からだの要素」が関わる、とても複雑な運動です。

このページでは、なぜボール投げが苦手な子がいるのか、その背景と特徴、体の使い方、そして現場や家庭でできる支援アイディアまで、わかりやすく解説します


■なぜボール投げが苦手な子がいるの?

●ボール投げは「全身の連動運動」

ボール投げは、

  • 目で目標をとらえる
  • 足を踏み出す
  • 体をひねる
  • 腕を大きく振る
  • タイミングよく手を離す

…といったたくさんの動きが“連動”することで初めてうまくいきます

●苦手の理由はいくつかあります

  1. 体のバランスや体幹が弱い
     → 体をひねったり、重心を移動させるのが難しい
  2. 力加減がわからない(固有覚の課題)
     → 強すぎたり弱すぎたり、力をコントロールしづらい
  3. タイミングやリズム感の苦手さ
     → 「投げる」動作と「足を出す」「手を離す」タイミングがずれる
  4. 目と体の協調がうまくいかない(視覚認知・空間認知)
     → 的をよく見ていても、体の動きと一致しにくい
  5. 運動経験や自信の不足
     → 苦手意識が先に立ち、「やってみよう」と思えなくなりがち

■ボール投げが苦手な子の特徴

  • 腕だけで投げようとし、体全体を使えていない
  • 足を前に出さず、その場で投げてしまう
  • 体のひねりがなく、ボールが上手く飛ばない
  • 投げるときに“肘が下がる”、または“手首だけ”で投げる
  • ボールの方向や距離が安定しない
  • 投げることに消極的、楽しそうでない様子

こうした特徴が見られる場合、「できない」ことを責めるのではなく、「どうしたら“できる”が増えるか」を考えることが大切です


■ボール投げに必要な「体の使い方」とは?

●下半身(足・股関節)

  • 投げる側の足を後ろに引いて、前に踏み出すことで「体重移動」ができます。
  • 踏み出す力が弱いと、体の回転やパワーが伝わりにくくなります。

●体幹(お腹・背中・体側)

  • 体幹をしっかりひねり、投げるときに回転させることで「全身のパワー」を腕に伝えます。
  • 体幹の筋肉が弱いと、腕だけの動きになり、ボールが飛びにくい。

●上肢(肩・肘・手首・指)

  • 肩をしっかり使い、大きく腕を振り上げる。
  • 肘を伸ばす、手首をしっかり使って“リリース”する。
  • 最後は指先まで「力とタイミング」を伝えることが大切です。

●感覚統合(目・体・空間)

  • 目で「的」を捉え、空間の距離や方向を感じ取る
  • 自分の体の動きや位置を把握(固有覚)
  • 動いている自分やボールの速さ・方向を脳で調整(前庭覚・バランス感覚)

これらの感覚がうまく働くことで「思ったとおりに投げる」ことができるようになります。


■理学療法士が考える「苦手さ」の発達的な背景

●発達ピラミッドの“土台”を見直す

「手先の器用さ」や「スポーツの上手さ」などの“応用的なスキル”は、
その下にある「体幹の安定」「バランス感覚」「感覚統合」といった“土台”がしっかりしていてこそ育ちます

●「できていない」=まだ土台を育てている途中

  • 幼児期や小学校低学年は、まず「大きく体を動かす」経験が何より大事
  • 体幹の安定・バランス・いろんな動きを経験することで、徐々にボール投げの力もついていきます

■家庭や学校でできる「ボール投げ」支援の工夫

1. いきなり難しいことを求めない

  • 最初は「両手で投げる」など、簡単なところからスタート
  • 足を出す・腕を振る・体をひねる…など、パーツごとに練習

2. 大きく、軽いボールを使う

  • ソフトなボールやビーチボールなど、当たっても痛くなく、握りやすいものがおすすめ
  • ボールが大きいとコントロールしやすく、投げる成功体験が増えます

3. 的当てやキャッチボール遊びで「楽しい!」を増やす

  • 大きな的やカラーコーンを使った的当て
  • 壁当てや床バウンドなど、失敗しても楽しめる遊び
  • 保護者や先生が“お手本”を見せながら一緒にやる

4. バランスや体幹を育てる遊びも取り入れる

  • 平均台の上を歩く、片足立ち、ジャンプ遊び
  • 公園の遊具やぶら下がりも、体幹・バランス感覚の発達に役立ちます

5. 「できた!」をたくさん認める・褒める

  • 遠くに投げられた、狙った方向に投げられた、タイミングよく投げられた…
    どんな小さな一歩も必ず認め、「がんばったね!」と伝えましょう。

6. 「恥ずかしい」「失敗がこわい」気持ちにも寄り添う

  • みんなの前でうまくいかなくても責めず、個別で練習する時間も用意する
  • 「一緒にやってみよう」「もう一回挑戦しよう」と声をかけて安心感をつくる

■まとめ・現場や家庭での支援策

ボール投げが苦手な子どもには、必ず“理由”があります。
その子自身の「体の使い方」や「発達段階」、「感覚の統合」に合わせて、焦らずじっくりと「できる」を増やしていくことが大切です。

★実践的な支援策まとめ

  • 全身運動やバランス遊びもボール投げの上達につながる
  • 投げ方をパーツごとに分けて練習する
  • 大きくて軽いボール、成功体験が増える的当て遊びを活用
  • 保護者や先生の“見守り”と“励まし”が自信になる
  • 運動が苦手な子にも“楽しさ”を感じてもらう工夫を

もし、どうしても苦手意識が強くて困っている場合は、理学療法士や専門家に相談するのも良い選択です。
その子の発達段階や体の特徴に合わせて、より細かなアドバイスやサポートが受けられます。


「できた!」が増えれば、苦手だったボール投げもきっと楽しくなります。
ひとりひとりのペースと“成功体験”を大切に、子どもたちの成長を一緒に応援していきましょう

コメント

タイトルとURLをコピーしました