「うちの子、なかなか寝つけない」「朝起きるのが苦手」「日中、ボーっとしている」
このような状態は学校などの教育現場でとてもよく聞かれます。
睡眠は子どもの健やかな成長にとって不可欠な「生活の柱」です。
十分な睡眠は脳と体の発達を支え、学習や記憶、情緒の安定にも直結します。逆に、睡眠不足は集中力の低下や情緒不安定、成長ホルモンの分泌低下など、さまざまな問題の原因になることが科学的にも明らかになっています。
本記事では、「子どもはどのくらい寝ればいいのか」「睡眠の質を高めるにはどんなことに注意すればよいか」について、専門的な根拠をもとに解説しながら、よく眠れているかどうかを確認できるチェックリストもご紹介します。
■子どもの発達と睡眠──なぜ睡眠がこれほど大切なのか?
●睡眠は「脳」と「体」の発達そのもの
睡眠は、脳の情報整理や記憶の定着、ホルモンバランスの調整、心身の回復など、
子どもの成長に欠かせないさまざまな役割を果たしています。
- 成長ホルモンは睡眠中に分泌される
特に「深い眠り(ノンレム睡眠)」の時間に成長ホルモンが多く分泌されます。これは骨や筋肉の成長、傷の修復、免疫機能の向上にもつながります。 - 脳の“整理整頓”と“記憶の固定”
昼間に体験したこと・学んだことは、睡眠中に脳内で整理され、必要な情報が「記憶」として定着します。 - 情緒の安定や行動のコントロールにも影響
良質な睡眠は、イライラや不安、注意散漫などを抑え、心の安定にも役立ちます。
●逆に睡眠不足だと…?
- 集中力・学習効率の低下
- 情緒不安定(怒りっぽい・泣きやすい)
- 身長・体重の伸び悩み
- ケガや事故のリスク増加
- 長期的には生活習慣病のリスクも
睡眠不足は、子どもだけでなく家族の健康や生活リズムにも悪影響を与えます。
■年齢別「理想的な睡眠時間」はどれくらい?
子どもの成長段階によって、必要な睡眠時間は異なります。
ここでは、厚生労働省・日本小児科学会・アメリカ睡眠医学会(AASM)などのガイドラインに基づいた“推奨睡眠時間”をまとめます。
年齢 | 推奨される睡眠時間(1日あたり) |
---|---|
0~3ヶ月 | 14~17時間 |
4~11ヶ月 | 12~16時間 |
1~2歳 | 11~14時間 |
3~5歳 | 10~13時間 |
6~12歳 | 9~12時間 |
13~18歳 | 8~10時間 |
※昼寝(お昼寝)も含めた総睡眠時間です。
“理想”と“現実”には差がある
近年、小学生〜中学生の睡眠時間は年々短くなっています。
特に「塾や習い事」「スマホ・タブレットの長時間利用」「夜遅くまでの家族生活」など、社会環境の変化も大きな要因です。
■どんなことに注意すれば“質の良い睡眠”になる?
1. 毎日なるべく同じ時間に寝て・起きる
体内時計(サーカディアンリズム)を安定させることが、良質な睡眠の土台です。
「平日は早起きだけど、休日は昼まで寝ている」というリズムの乱れが、寝つきの悪化や朝のだるさにつながります。
2. 就寝前の“ブルーライト”に注意
スマホやタブレット、テレビなどのブルーライトは「脳を昼間だと錯覚させてしまい、寝つきを悪くする」ことが分かっています。
寝る1時間前からは電子機器の使用を控えるのが理想です。
3. 夕方以降のカフェイン摂取を控える
お茶・コーラ・ココア・チョコレートなど、カフェインを含む飲食物は覚醒作用があり、寝つきの悪化や夜中の目覚めの原因に。
4. 寝る前の激しい運動・興奮を避ける
眠る直前まで激しい運動をすると、体温や交感神経が高まってしまい、なかなか寝つけなくなります。
一方、寝る1〜2時間前までの軽い運動やストレッチは睡眠の質を高める効果があります。
5. 入浴は就寝の1〜2時間前に
お風呂で一度体温を上げ、そこから体温がゆっくり下がっていく過程で“自然な眠気”が訪れます。
シャワーだけより、湯船につかるほうがリラックス効果も高まります。
6. 寝室の環境を整える
- 暗くて静かな部屋
- 室温は20〜25℃程度(夏は28℃を超えないように)
- 寝具やパジャマは汗を吸いやすく、肌触りが良いものを
7. 朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる
朝日を浴びることで「メラトニン(睡眠ホルモン)」のリズムが整い、夜の寝つきも良くなります。
■「よく眠れている?」セルフチェックリスト
保護者や先生が子どもの睡眠の質を知るには、毎日の様子を観察することが大切です。
以下の項目をチェックしてみましょう。
□ 夜、布団に入ってから30分以内に寝ついている
□ 朝は自分で起きられる
□ 起床時に機嫌がよく、だるさを感じていない
□ 日中、あくびやウトウトする様子が少ない
□ 学校で集中して活動できている
□ イライラや気分の波が激しくない
□ 寝汗や夜間の目覚めが多すぎない
□ 毎日ほぼ同じ時間に寝て・起きている
→これらに多く当てはまれば、睡眠の質はおおむね良好と考えられます。
他にも、睡眠についてのチェック項目など知りたければこちら👇
■よくある睡眠の悩みと対策
●「なかなか寝つけない」「夜中に何度も起きる」
- 寝る前のスマホやテレビをやめる
- 寝る1〜2時間前にぬるめのお風呂
- リラックスできる音楽や絵本の読み聞かせ
- 寝室の明かりを落とす
●「朝起きるのがつらい」「起きてもだるい」
- 朝日をしっかり浴びる
- 朝食をとる
- 休日もなるべく同じ時間に起きる
●「夜更かしがやめられない」
- 生活リズムの見直し
- 家族全員で“夜は静かに過ごす”工夫
●「昼寝が長すぎる」
- 夕方以降は寝かせない
- 昼寝は15〜30分までに
■子どもの発達障害や慢性的な睡眠問題への配慮
発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)を持つ子どもは、
- 眠りにくい、夜中に目覚めやすい
- 朝の覚醒が遅い
- 生活リズムが乱れやすい
といった特徴がみられやすいという報告があります。
この場合、「個々の特性に合わせた睡眠環境づくり」や「専門家への相談」も重要です。
■まとめ──「睡眠」は子どもの可能性を伸ばす基礎
- 子どもの発達には、十分な睡眠時間と良い睡眠の質が不可欠
- 年齢ごとに必要な睡眠時間を知り、家庭や学校でサポートしよう
- スマホや夜ふかし、寝室の環境など生活習慣にも注意
- 眠れているかどうか、日常の様子やチェックリストで観察
- 睡眠のトラブルが続く場合は、無理せず医療機関や専門家に相談を
“よく眠れて、よく育つ”——子どもたちの健やかな成長のために、
睡眠の大切さを改めて見直し、生活の中でできることから始めてみてください。
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