「せっかく申し込んだのに、始まるのは半年後」と言われて、何もできない時間だけが過ぎていく。あの感じ、しんどいですよね。
理学療法士として発達のご相談を受けていると、待機中のご家庭からよくこんな声を聞きます。
「待っている間に、できることは全部やっておきたいんです」
その気持ち、すごくよくわかります。
ただ——正直に言うと、この「全部やっておきたい」が、いちばん危ないんです。
今日は、待機中のご家庭がよかれと思ってやりがちで、実は逆効果になりやすいことを3つだけお話しします。3分で読めます。
逆効果① 「遅れを取り戻さなきゃ」と、練習を増やす
これがいちばん多いです。
半年待つと聞いた瞬間、「その半年ぶんを取り戻さなきゃ」と思ってしまう。それで毎日の課題を決めて、できるまでやらせる。
気持ちはわかります。でも、ここで失うものが大きいんです。
発達の支援でいちばん守りたいものって、実は運動の上達でも、できることの数でもありません。
「やってみようかな」と思える気持ちです。
これを一回なくしてしまうと、取り戻すのに何倍も時間がかかります。せっかく療育が始まっても、「またやらされる場所が増えた」と身構えてしまう子は、本当に少なくありません。
半年で失われる発達より、やる気を失ったあとの半年のほうが、ずっと痛いです。
それでも「何かさせたい」なら
ひとつだけ、抜け道があります。
親が教える役を降りることです。
これは現場でいつも感じることなんですが、子どもって、親が相手だと甘えが出て本気になりません。ところが親以外の大人が相手だと、驚くほど動きます。家では「もうやだ」と言っていた子が、コーチの前では最後までやりきる。よくある光景です。
「がんばらせたい」のであれば、がんばらせる役を外に出したほうが、親子ともにラクになります。
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逆効果② できないことを、できるまでやらせる
縄跳びが跳べないから、毎日縄跳びを練習する。
ボールが捕れないから、毎日キャッチボールをする。
——もっともらしいんですが、これ、たいてい遠回りです。
たとえば縄跳びが跳べない理由って、縄跳びそのものにはあまりありません。
- 体幹で姿勢を保てているか
- 手と足を、別々のリズムで動かせるか
- 回ってくる縄を、目で追えているか
だいたいこのあたりが手前でつまずいています。
ここが整っていないまま回数だけ重ねても、「できなかった経験」が積み上がっていくだけなんですね。しかも本人は、自分が何でできないのか分からないまま。これはつらいです。
待機中にやる価値があるのは、種目の練習ではなく、その手前にある姿勢・バランス・体の感覚のほうです。
▶ 具体的な遊びはこちら:【PT厳選】小学生の体幹と感覚を育てる「療育運動遊び」8選
逆効果③ 寝る前に、スマホで検索する
身に覚えのある方、多いと思います。
子どもを寝かしつけたあと、ベッドの中で「発達 遅れ 3歳」みたいなワードを打ち込んでしまう。そして、余計に眠れなくなる。
これ、意志が弱いわけではまったくないです。そういう仕組みになっているだけなんです。
SNSにも検索結果にも、「うまくいっている話」が集まりやすい構造があります。うまくいかない日常は、わざわざ投稿されません。だから調べれば調べるほど、「うちだけ遅れている」という結論に近づいていきます。
おすすめしたいのは、比べる相手を変えることです。
よその子ではなく、3ヶ月前のわが子と比べてください。
ただ、これには前提がひとつあります。3ヶ月前のわが子を覚えていないと比べられない、ということです。だから記録がいるんですね。この話は長くなるので、詳しくは後半でご紹介する記事にまとめてあります。
じゃあ、待機中は何をすればいいの?
ここまで「やらないほうがいいこと」ばかりお話ししてきました。
逆に、やっておくと療育が始まってから効いてくることもあります。というより、こちらのほうが本題です。
ざっと挙げると、こんな内容です。
- 困りごとを「記録」しておく(これがいちばん効きます)
- 家の環境を整える
- 体の土台を育てる遊びを1日10分
- 園・学校と情報を共有しておく
- 「待たない選択肢」をひとつ持っておく
それぞれの具体的なやり方と、記録用のテンプレートは、別の記事にまとめました。待機中のご家庭は、こちらを読んでいただくのがいちばん近道だと思います。
▶ 療育の順番待ちが半年…理学療法士が教える「待っている間」にやるべき5つのこと
最後に
待機期間って、「何もしていない時間」に見えてしまうんですよね。
でも実際には、力を抜くべきところで抜けているかどうかで、療育が始まってからの伸び方がけっこう変わります。
だから、今日お伝えした3つは「サボっていい」という話ではなくて、力の入れどころを間違えないでほしいという話です。
そして、それでも不安が消えないときは、ひとりで抱えないでください。
「何が正解か分からない」——待機中のご家庭から、私がいちばん多く聞く言葉です。これは調べても出てきません。お子さんを見ないと答えられないからです。
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この記事を書いた人:ゆうだい(理学療法士)/発達に特性のあるお子さんの運動・姿勢の支援を専門にしています。

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