ボディイメージが低い子の特徴と育て方〜体をうまく使えない理由〜

姿勢

「なんでこんなに不器用なんだろう…?」「何度やっても体操がうまくできない」「椅子に座るとグニャっと姿勢が崩れる」「体の動かし方が他の子となんだか違う」

日々、子どもたちと関わるなかで、そんな“違和感”を覚えたことはありませんか?
実はそれ、ボディイメージの発達」がうまくいっていないサインかもしれません

今回は理学療法士の視点から、ボディイメージが未熟な子どもに見られる特徴と、育て方のヒントをお伝えしていきます。


「ボディイメージ」って何?

ボディイメージとは、「自分の体がどんな形をしていて、今どこにあるか」「どう動かせばいいのか」を、感覚として頭の中で把握している力のことです。

例えば…

  • 自分の手足の長さを把握して、棚にある物を取る
  • 狭い場所を通るときに体を縮めて通る
  • 背筋を伸ばして座る感覚を意識する

こうした当たり前の動作も、頭の中で“体の地図”を持っているからこそできること。
この力が弱いと、体をうまく動かせなかったり、自分の姿勢に気づかなかったりして、「できない子」と誤解されがちです。


ボディイメージが低い子どもに見られる特徴

学校や家庭で見られやすい特徴を紹介します。

よくぶつかる、よく転ぶ

体の大きさや手足の位置を正確に把握できていないと、狭い場所で壁にぶつかったり、イスの脚に足を引っかけたりすることが増えます。

姿勢が崩れやすい

椅子に座っていると、体が左右どちらかに傾いたり、背もたれにダラっともたれたり。自分の姿勢が「今どうなっているか」を感じにくいためです。

運動やダンスが苦手

手足のタイミングが合わなかったり、動きの順番を理解できなかったり。自分の体のパーツをうまくコントロールできず、運動が「楽しくない」と感じやすい子もいます。

文字や図形が歪む・書きにくい

鉛筆を持つ力加減が分からず筆圧が不安定だったり、文字の大きさやバランスが揃わない場合も、体の細かな動きの把握が苦手なケースがあります。


どうしてボディイメージが育たないの?

子どもたちは、生まれてからたくさんの動きを通して「自分の体を感じる経験」を重ねています

  • ハイハイや寝返りで床を感じる
  • 登る・くぐる・ぶら下がるなど全身を使って遊ぶ
  • 転んだり、ぶつかったりして体の限界を知る

こうした経験を通じて、脳に「自分の体の地図」ができていきます


しかし最近では、安全や衛生面、過剰な声かけや制限、遊ぶ場所や時間の不足などにより、体を思いきり動かす機会が少ない子が増えています

また、姿勢を支える筋力が育っていなかったり、感覚過敏・鈍麻がある子の場合も、うまく体を感じることができず、ボディイメージが育ちにくくなります。


理学療法士が考える「ボディイメージを育てる関わり方」

ここからは、家庭や学校でできる支援の具体例をご紹介します。


【1】「自分の体を感じる遊び」を日常に取り入れる

ボディイメージは机上の勉強では身につきません。
体を動かし、感覚を刺激することで少しずつ育っていきます。

  • タオルの綱引き:力加減と接触感覚を養います
  • ごろごろ転がる遊び:体の向きや傾きを感じます
  • クッションでの“挟み遊び”:身体の輪郭をはっきりさせる
  • ブランコやバランス遊び:重力に対する体の使い方を学ぶ

💡 ポイント:動きを意識させるような声かけを添えると、より効果的です。
「今、どこが床についてる?」「腕をどれくらい伸ばせば届くかな?」など、感覚と言葉をつなげてあげましょう。


【2】鏡を使って「自分の姿勢・動き」を見せる

自分の姿勢や動きは、本人にとっては“無自覚”であることがほとんど。
鏡を使って、「どう見えているか」「どこが曲がっているか」を一緒に確認することは、視覚的なフィードバックとしてとても有効です。

  • 鏡の前でポーズを真似する
  • 左右対称の動き(バンザイ、ジャンプ)を見せる
  • 姿勢チェック:「背中が丸まってる?」「肩が上がってる?」

【3】「どこが動いた?」を聞いてみる習慣

日常の運動や移動のあとに、「どこが疲れた?」「どこを使った?」と聞いてみることで、体に意識を向けるきっかけになります。

これは認知運動療法でも大切にされているアプローチで、動きを“ただやる”のではなく、“感じる・考える・言葉にする”ことで脳の中にボディイメージが作られていきます


【4】学校や園での姿勢サポート

姿勢が安定しにくい子には、椅子の高さや足の接地面を見直すだけでも効果があります。

  • 足がブラブラしていないか確認する(足台の使用もOK)
  • 背中と腰の間にクッションを挟んで支える
  • 長時間の座位後に軽いストレッチや体操を挟む

「姿勢が悪い!」と注意するより、「どうしたら座りやすいか?」を一緒に探る関わりのほうが、子どもの自己調整力を育てます。


「できない」には理由がある

子どもたちの体の不器用さや姿勢の崩れには、ただの性格ややる気不足ではない、“感覚”や“脳の働き”の問題が隠れていることがあります。

大人がそのことを知って関わり方を変えていくと、子どもたちは自分の体に自信を持ち、自然と学びや活動への参加が増えていきます。

ボディイメージは、「感じて、動いて、考える」ことで育つ力です。
特別な道具や時間がなくても“日々の生活の中でできること”はたくさんあります。

今日からできる一歩を、ぜひご家庭や学校で取り入れてみてくださいね。

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