長時間座っていられない子どもへの家庭でのサポート方法【理学療法士が解説】

学校

「うちの子、すぐ立ち歩いてしまう」「宿題を始めても集中が続かない」――このようなお悩みを抱える保護者の方は少なくありません。

実は、子どもが長時間座っていられないのには、単なる“落ち着きのなさ”だけでない、発達や感覚に関わる理由が隠れていることがあります。

この記事では、理学療法士の視点から、座っていられない原因と、それに対して家庭でできるサポート方法についてわかりやすく解説していきます。


■ なぜ子どもは長時間座っていられないの?

まず前提として、子どもは大人のように長く集中したり、静止しているのが得意ではありません。

特に未就学児や小学校低学年のうちは、座って作業するための身体的・神経的な土台がまだ発達途中です。

以下のような原因が複合的に関係しているケースが多く見られます。

1. 感覚統合の未熟さ

「姿勢を保つ」「座っている状態に気づく」「イスと身体の位置関係を把握する」といったことには体性感覚・前庭感覚・固有感覚などの情報処理が必要です。

これらの感覚統合が未熟だと、座るという行為そのものが苦痛に感じられることもあります。

感覚統合についてもう少しわかりやすく知りたい方はこちら

「感覚統合ピラミッド」とは?子どもの運動・落ち着き・集中力を伸ばす家庭ワーク集

2. 姿勢を保つ筋力が弱い

背筋や体幹の筋力が十分でないと、姿勢を維持するのが難しくなります。

その結果、体が疲れてぐらぐらしたり、無意識に立ち上がってしまうことがあります。

3. 注意や衝動のコントロールが未発達

発達特性として、注意が散りやすかったり、思いついたことをすぐ行動に移してしまうお子さんもいます。

これらは家庭のしつけとは無関係に、脳の発達段階と関係しています。

4. 不安や環境による影響

教室が騒がしかったり、イスが合っていなかったり、机の上が散らかっているなどの環境的なストレスも、座りにくさの原因になります。


■ 長く座れるようになるには?家庭でできる5つの支援方法

1. 姿勢を整える「環境づくり」

長く座っていられないお子さんの多くは、そもそも机やイスの高さが合っていないことが多いです。

  • 足の裏がしっかり床につく or 足台で支える
  • 机の高さは、肘を曲げたときに天板に手が自然に乗る位置
  • お尻・背中がイスの奥までしっかりつけられる

イスに深く腰かけることが難しい場合は、背もたれにクッションを挟むなども有効です。

2. 動いていい時間・動かない時間のメリハリをつける

「ずっと座ってなさい」は子どもにとって酷です。

逆に、「〇分は頑張って座ろう」「この音が鳴ったら体を動かしてOK」など、ルールを明確にし、切り替えを見える形にすると安心して行動できます。

  • タイマーを使って「5分集中→1分体操」のリズムを作る
  • 「このプリントをやったら休憩できる」と視覚的に伝える

3. 体幹やバランスを遊びで鍛える

体幹が安定すると、姿勢を保ちやすくなり、座ることも苦でなくなります。

以下のような遊び感覚でできる運動を日常に取り入れてみましょう。

  • 片足立ちゲーム(「何秒できるか競争」など)
  • バランスボールやクッションの上に座って体幹トレーニング
  • 四つ這いでトンネルくぐり・動物歩き

遊びながら自然に体幹やバランス感覚を刺激することで、無理なく座る力を育てられます。

4. 感覚刺激で“今ここ”に気づく

イスの上で姿勢が崩れやすいお子さんには、「自分が座っている」「いま体がどこにあるか」を実感するための感覚入力が有効です。

  • イスに座布団やバランスディスクを敷いてお尻の感覚を刺激
  • 重さのあるブランケットを膝に乗せて感覚入力
  • イスの足元に丸めたタオルなどを置き、足裏感覚を安定させる

5. 「できた!」を感じられる声かけと記録

子どもは「できた」と実感できた行動をまたやろうとします。頑張って座っていたら、その場で具体的に褒めることがポイントです。

例えば:

  • 「5分間しっかり座って宿題できたね、すごい!」
  • 「今日のプリント、集中できたから早く終わったね」

シールを貼るカレンダーや、「今日の頑張りカード」などを使って、視覚的に振り返れるようにするのもおすすめです。


■ 無理は禁物。まずは“座れる時間”を一緒に喜ぼう

座っていられないことを怒ったり、叱ったりしても、子どもは「苦手なことが増えた」と感じてしまいます。

それよりも、「今日はちょっと長く座れたね」「昨日より集中できたね」というように、少しずつできるようになった変化に気づき、喜んであげることが大切です。

また、年齢や発達段階によっては、「そもそも座る力」が未熟なだけであり、本人の努力や親のしつけの問題ではありません。

心配な場合は、専門職(理学療法士・作業療法士・発達支援の相談機関など)に相談してみるのもひとつの方法です。


■ まとめ:家庭でできるサポートは、感覚・姿勢・環境の3本柱

長時間座っていられない子どもをサポートするには、「静かに座らせる」ことよりも、「座れるようになる土台を育てる」ことが大切です。

そのために、次の3つの視点を意識しましょう:

  1. 感覚:体の位置を感じる遊び・刺激を取り入れる
  2. 姿勢:体幹やバランスを鍛える活動を日常に
  3. 環境:座りやすい机・イスの高さや支援具の工夫

「じっと座ってられない=悪いこと」と思い込まず、子どもに合った支援を重ねていくことで、少しずつ集中できる時間が育っていきます。

お子さんと一緒に、“できた!”を積み重ねていきましょう。

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