「うちの子、寝ても寝ても朝スッキリしない…」「なんだか集中力が続かないかも?」
それ、もしかすると“睡眠の質”が関係しているかもしれません。
実は、日本の子どもたちは世界的に見ても、かなり睡眠不足気味といわれています。
睡眠は、脳や体の発達・学び・感情の安定…全てに関わるとても大切な時間なんです。
この記事では、子どもの睡眠不足が引き起こす問題やその原因、さらに「呼吸」や「姿勢」との関係についても、理学療法士の視点から解説します。
少し長くなるので、気になる章だけでも読んでいただけると幸いです。
日常のちょっとした工夫で、お子さんの眠りがグッと変わるかもしれませんよ。
睡眠が子どもに与える影響
成長ホルモンの分泌と身体の発育
知っている方も多いとは思いますが、人間は深いノンレム睡眠の時間帯に、成長ホルモンが最も分泌されることがわかっています。
成長ホルモンは骨や筋肉の発達を支えるだけでなく、免疫力の維持やケガの回復にも欠かせません。
記憶と学習の定着
睡眠中、特に深い睡眠では日中の経験や学習内容が整理・定着されます。
米国の研究では、睡眠時間が9時間未満の子どもは注意力や判断力が低下し、学習成績にも影響が出ることが報告されています。
子供から大人まで、睡眠と記憶の関係は切っても切り離せないもの。
子供の記憶や学習の定着が悪いと思っている方、もしかしたら睡眠が原因かもしれません。
情緒の安定と社会性の育成
睡眠が不足すると、子どもはイライラしやすくなり、落ち着きがなくなったり、攻撃的になる傾向が見られます。
十分な睡眠は、感情を安定させるためにも不可欠です。
日本の子どもたちは世界でも睡眠不足?
平均睡眠時間はOECDでも最下位
OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本の成人の平均睡眠時間は最下位。
子どもも例外ではなく、小学生で平均8時間56分、中学生で7時間57分というデータも。
推奨されている時間は、小学生9~12時間、中学生8~10時間なので、日本の子供は推奨される睡眠時間を下回っていると判断されます。
国際比較で見る深刻な睡眠格差
日本の中学生の睡眠時間は、アメリカより30分、スイスより150分も短いという調査もあり、睡眠において日本は先進国の中でも極端に短い国だと言えます。
これは価値観や社会環境によっても影響されているといわれています。
子どもの睡眠不足が引き起こすこと
- 成績の低下、集中力の欠如
- 朝の不調(頭痛、吐き気、食欲不振)
- 情緒の乱れ、攻撃性の増加
- 肥満、免疫力の低下、生活習慣病のリスク上昇
- 感覚運動の精度低下、運動発達の遅れ
さらに、前頭葉の発達が遅れたり、灰白質の量が減少するといった脳の構造にまで影響を与えることが、最新の脳科学研究でも報告されています。
簡単に言うと、脳の発達が遅れやすい。
子どもが眠れない理由とは?
子供が眠れない原因は複数存在しますが、大きく分けると以下のようなものがあります。
デジタル機器とブルーライト
スマホ・タブレット・ゲームなどの使用は、睡眠ホルモン(メラトニン)を抑制します。
とくに夜間の使用は、子どもを「眠くならない」状態にしてしまいます。
塾や習い事による生活の後ろ倒し
塾や部活で帰宅が遅くなり、食事やお風呂・宿題が深夜に食い込むケースも。結果、就寝時間が遅くなり、睡眠の質と量がどちらも低下します。
家庭のリズムや環境の影響
共働き家庭では親の帰宅に合わせて生活が遅くなることもあります。さらに、「明るすぎる照明」「寝る直前までテレビをつけっぱなし」といった環境も、睡眠の質を下げる要因です。
日中の活動量低下
日中の活動量が低下すると、深部体温が上がりきらず睡眠導入まで時間がかかったり、身体的な疲労が少なく、睡眠の深さにも影響が出てしまいます。
睡眠と「呼吸」の深い関係
鼻呼吸 vs 口呼吸
子どもが口呼吸をしている場合、以下のような影響が出やすくなります:
- 風邪・感染症・アレルギーにかかりやすくなる
- 睡眠時無呼吸症候群やいびきが生じやすくなる
- 歯並びや顔貌(いわゆるアデノイド顔貌)への影響
- 睡眠の質が低下し、熟睡できない
逆に、鼻呼吸は空気を加湿・加温・浄化し、リラックス効果を高めてくれる自然な呼吸法です。
理学療法士が見る「睡眠・姿勢・呼吸筋」のつながり
睡眠の質には、「呼吸筋」や「姿勢」も大きく関係します。
猫背で胸郭がつぶれている子どもは、深い呼吸ができず、結果として眠りが浅くなる傾向があります。
理学療法士が提案するサポート方法
- 寝る前の腹式呼吸や風船を使った呼吸トレーニング
- 口輪筋や舌筋のトレーニングで口唇閉鎖を促進
- 子どもの身体に合った枕や寝具の見直し
- 日中の体幹運動で交感神経の緊張をゆるめる
- 感覚統合を目的とした運動で、日中の覚醒レベルを整える
睡眠の質を高めるために、家庭でできること
日中の運動と太陽光
- 朝起きたら太陽の光を浴びる
- 1日60分以上の身体活動を心がける
- 日中しっかり体を動かすことで、自然な入眠を促進
就寝前のルーティン
- 寝る前1~2時間はデジタル機器を使わない
- 暗めの照明で過ごす
- ぬるめの入浴で体温を上げ、ゆっくり下げてから眠る
- 就寝・起床時間を一定にする(平日も休日も同じリズム)
環境の見直し
- 寝室は静かで暗く、室温は20〜27℃に調整
- 子ども専用の寝具を用意し、寝心地のよさを大切に
- 枕は高すぎず、気道が確保される高さに調整
まとめ
子どもの睡眠は「時間」だけでなく、「質」も同じくらい重要です。
脳・身体・感覚・情緒の発達すべてに関わる睡眠を整えることは、子どもたちの可能性を広げる土台づくり。
呼吸、姿勢、環境など、多角的な視点からサポートすることが、これからの子ども支援にとって不可欠です。
家庭や学校、そして専門職が一体となって、子どもたちにとって「最高の睡眠」を支えていきましょう。
参考資料(一部抜粋)
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
- Wang et al., Lancet Child Adolesc Health 2022
- 大川匡子「子どもの睡眠と脳の発達」
- 朝日新聞・博報堂教育財団調査
- いびきメディカルクリニック
もっと知りたい方は👇の本も参考になるのでぜひ
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