🌱 ボディイメージとは?
子どもが体を上手に使うためには、「自分の体をどのように動かしているか」を感じ取り、頭の中でイメージする力が欠かせません。
この力を理学療法の分野では「ボディイメージ(身体の地図)」または「ボディスキーマ(身体図式)」と呼びます。
たとえば、
- 手を見なくても袖に腕を通せる
- 狭いところを通るとき自然と体を傾ける
- ボールを投げるとき、ちょうどよい力加減で投げられる
こうした動きがスムーズにできるのは、脳の中で「自分の体の構造と動き」が正確にイメージできているからです。
ボディイメージは、身体を感じ、動かし、調整する力の土台といえます。
🔍 ボディイメージが未発達な子に見られる特徴
ボディイメージが十分に育っていない子どもに次のような特徴が見られます。
- よく物や人にぶつかる
- 姿勢が崩れやすく、じっとしていられない
- 左右・上下・前後などの空間認識が苦手
- 力加減が難しく、筆圧や運動が極端
- 模倣遊びやリズム運動が苦手
一見「不器用」や「集中できない」と見られる行動の背景には、身体感覚の未統合(感覚情報がうまくまとまっていない)という要因が隠れていることがあります。
🧩 理学療法士が見る「ボディイメージ発達のメカニズム」
ボディイメージは、脳の中で感覚情報を統合することで形成されます。
特に重要なのは、以下の3つの感覚です。
① 触覚(皮膚からの情報)
→ 自分の体の“輪郭”を感じる感覚。
抱っこ・くすぐり・タオルで包まれるなど、全身の触覚体験を通じて「ここまでが自分の体」と感じ取ります。
触覚についてはこちらの記事を👇
触覚は「安心感」と「学び」の入り口──子どもの発達を支える“皮膚感覚”の力
② 固有感覚(筋肉・関節からの情報)
→ 手足をどのくらい動かしたか、どれくらい力を入れたかを感じ取る感覚。
重いものを持つ、押す、引っ張るなどの動きを通じて育ちます。
固有覚についてはこちらの記事👇
固有覚は「体の位置と動きを知らせる感覚」──力加減・姿勢・運動スキルの基盤
③ 前庭感覚(バランス・重力の感覚)
→ 頭や体の位置、動く方向を感じ取る感覚。
回転したり、傾いたり、ジャンプしたりする体験が刺激になります。
前庭覚についてはこちらの記事👇
前庭覚は「体のナビゲーションシステム」──姿勢・バランス・集中力を支える感覚
理学療法士の視点では、これら3つの感覚がバランスよく働くことで、脳の中に「正確な身体地図」が描かれ、運動や姿勢制御がスムーズに行えるようになります。
感覚統合の基礎と支援方法── 触覚・前庭覚・固有覚から考える子どもの発達サポート
🏠 家庭でできる!ボディイメージを育てる運動あそび
ここからは、理学療法士が家庭でできる感覚運動を紹介します。
🧸 ① タオルくるまり遊び(触覚刺激+安心感)
やり方:
バスタオルや毛布でお子さんをくるくる巻き、「おにぎりごっこ」「ミノムシごっこ」をします。
優しく押したり、転がしたりしてもOK。
効果:
圧刺激が全身に伝わり、体の輪郭が明確になります。
触覚の偏りがある子にもおすすめ。
理学療法士の視点:
皮膚への均一な圧刺激は、体性感覚を整理し、安心感を与えます。
リラックス状態での触覚刺激は、感覚統合の基盤づくりに最適です。
🐻 ② 動物になりきりごっこ(固有感覚+体幹強化)
やり方:
- クマ歩き(手足をついて腰を上げて歩く)
- ワニ歩き(お腹をつけてズリズリ進む)
- カエル跳び(しゃがんでジャンプ)
効果:
手足や体幹の筋肉を使うことで、関節からの感覚が豊かになります。
姿勢の安定性や運動のスムーズさが向上。
理学療法士の視点:
四つ這い運動は、発達段階で極めて重要な動きです。
重力に逆らいながら体を支える経験が、ボディイメージ形成に直結します。
👯 ③ ミラーあそび(視覚×運動の統合)
やり方:
おとなと向かい合い、鏡のように同じ動きをまねします。
「右手を上げる」「ジャンプする」「回る」などテンポよく!
効果:
自分の動きを意識的にコントロールする練習になります。
空間認識力や模倣能力の向上にもつながります。
理学療法士の視点:
ミラー運動は「ミラーニューロン」を活性化させ、社会的スキルや模倣力の発達にも関係します。
運動企画力(どう動けばいいかを考える力)を高める遊びです。
👁️ ④ 目を閉じてポーズあてっこ(身体認識力アップ)
やり方:
目を閉じて「片足立ち」「Tの字」「腕をクロス」などのポーズをとります。
終わったあとに目を開けて確認してみましょう。
効果:
視覚に頼らずに体の位置を感じる練習になり、姿勢保持力が向上します。
理学療法士の視点:
視覚を遮断することで、固有感覚・前庭感覚がより鋭敏に働きます。
脳が「自分の体の内側の情報」を使って姿勢を保つ訓練になります。
⚖️ ⑤ バランス遊び(前庭感覚の発達)
やり方:
- クッションやバランスボードの上で立つ
- 坂道を歩く
- ゆっくり回転イスで回る
効果:
体の中心を意識できるようになり、姿勢が安定します。
理学療法士の視点:
前庭感覚の発達は「姿勢制御」だけでなく、「集中力」「学習意欲」にも影響します。
前庭刺激は脳の覚醒レベルを調整する役割を持ち、心身の安定にもつながります。
バランス運動はこちらの記事を👇
専門家が選ぶ!子どものバランス感覚を育てる体幹トレーニングおもちゃ5選【家庭でできる】
💡 理学療法士からのアドバイス
ボディイメージを育てるときに大切なのは、「できた・できない」ではなく「どう感じたか」です。
失敗や試行錯誤の中で、脳は「新しい身体の地図」を更新しています。
また、感覚刺激は「楽しい」「心地いい」と感じるときに最も効果的です。
おとなが「一緒に楽しむパートナー」として関わることで、安心感の中で感覚統合が進みます。
🧭 まとめ
- ボディイメージは「自分の身体を頭の中で感じ取る力」
- 触覚・固有感覚・前庭感覚の3つが統合されて育つ
- 家庭でも遊びを通して鍛えることができる
- 「感じる体験」こそが脳を育てる
日常の遊びの中で少しずつ「自分の身体を感じ取る経験」を重ねていくことが、運動能力・姿勢・学習意欲を支える基盤になります。
すこっぴーラボでは、理学療法士の視点をもとに、子どもの発達や成長に関する情報を発信しています。お子さまの「身体の使い方」や「運動発達」で気になることがある方は、無料相談も受け付けています。


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