「うちの子、すぐよそ見しちゃって…」「授業中もボーッとしていることが多いみたい」
そんな悩みを抱えている保護者や先生は少なくありません。
集中力が続かない、あるいは集中のスイッチが入らない子どもたちは、決して珍しくありません。
この記事では、集中力の仕組みを「選択的集中」「持続的集中」という切り口からわかりやすく解説し、理学療法の視点も交えながら、家庭や学校での関わり方のヒントをお伝えします。
集中力とは「注意の向け方」と「続け方」
集中力とは、心理学や脳科学では「注意(attention)」として扱われています。
注意にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる役割を果たします。
- 選択的注意:多くの情報の中から必要なものだけに意識を向ける力
- 持続的注意:特定の対象に意識を向け続ける力
- 交替的注意:注意の対象を切り替える力
- 分配的注意:複数のことに同時に注意を向ける力
中でも、子どもの日常生活や学習場面で特に注目したいのが、「選択的集中」と「持続的集中」です。
選択的集中:必要なものに意識を向ける
たとえば、教室で先生の話を聞くには、周囲の音や動きなど多くの刺激の中から「先生の声」だけに意識を向ける必要があります。
このときに働いているのが「選択的集中」です。
この力が弱いと、ちょっとした物音や視覚的な刺激に反応しやすく、「落ち着きがない」「注意がそれやすい」と見られることがあります。
持続的集中:集中を保ち続ける力
選択的に注意を向けられても、それを持続するのはまた別の力が必要です。
これが「持続的集中」です。
たとえば、10分間プリントに取り組んだり、図工で1つの作品を仕上げたりするには、この持続的集中が必要になります。
持続的集中が難しいと、途中で飽きてしまったり、体を動かしたりしてしまいやすくなります。
理学療法の視点:集中力と身体・感覚の関係
理学療法では、注意力や集中の問題に対して、身体的・感覚的な観点からの理解も重要です。
発達段階においては、感覚の処理や姿勢の安定性などが集中力に大きく関係していると考えられています。
たとえば、以下のような特徴は、集中のしづらさにつながる可能性があります:
- 姿勢を保つ筋力が弱い:座位姿勢を長く保てず、体がふらついたり、姿勢が崩れたりしやすい。
- 感覚刺激に過敏/鈍感:音や触覚に対して過敏で気が散りやすい/逆に強い刺激でないと注意が向きにくい。
- 前庭感覚や固有感覚の未発達:身体の安定感が乏しく、落ち着いて座ることが難しい。
このような場合、集中力の問題は「努力不足」や「性格」のせいではなく、身体の発達的な要因が関係している可能性があります。
集中力を育てる5つの工夫
集中力は訓練や環境によって育てていける力です。以下のような工夫が役立ちます。
1. 環境を整える
周囲の視覚刺激や音の影響を受けにくい場所で学習を行うと、選択的集中がしやすくなります。
2. 感覚刺激を活用する
ジャンプ、バランス運動、くぐる動作などの活動は、前庭感覚や固有感覚に働きかけ、注意の安定に貢献するとされています。
3. 時間を短く設定する
最初は2〜3分から始めて、徐々に集中できる時間を伸ばしていくと無理なく取り組めます。
4. 子どもに選ばせる
「どの課題から始める?」といった声かけで、自主的な選択を促すと集中しやすくなることがあります。
5. 成功体験を積ませる
「5分間集中できたね」「途中で立ち上がらずにできたね」と、具体的に振り返ることで、自己効力感の向上にもつながります。
まとめ:集中できない背景を理解し、関わり方を工夫する
集中力が続かない子どもに対しては、叱るよりもまず「なぜ集中しにくいのか?」という背景に目を向けることが大切です。
身体の姿勢保持、感覚の特性、環境など、さまざまな要因が集中力に影響を及ぼします。
理学療法の知見からも、こうした身体的・感覚的な土台を整えることが、子どもの集中を支えるために重要だと考えられています。
日々の生活の中でできる工夫を積み重ねることで、子どもの集中力は少しずつ育っていきます。大人の関わり方も、変化の大きな支えになります。
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