「季節の変わり目になると、うちの子はよく体調を崩すんです」「天気が悪い日は朝からグズグズ…なんだか元気がない」
こうした声は、学校やご家庭の現場で多く耳にするはずです。
実は、こうした不調には体や脳、そして環境への“感受性”が深く関係しています。
この記事では、理学療法士の視点から、子どもたちが季節や天候に左右されやすい理由を解説しながら、家庭でできる対策やサポートの工夫をお伝えしていきます。
1. 子どもはなぜ天候や季節に影響を受けやすいのか?
● 自律神経の未熟さ
子どもの体は大人に比べて「自律神経」が未熟です。
気温や湿度、気圧の変化に応じて体温調整や内臓の働きを切り替える力がまだ育っていないため、気象の変化がそのまま“体調不良”として表れることがあります。
● ホメオスタシス(恒常性)のバランスが崩れやすい
ホメオスタシスは、体内の状態を一定に保つ働きのこと。
これには「脳幹」や「視床下部」が関わっており、外界の変化に対して柔軟に調整できる力が必要です。季節の変わり目は外の環境が大きく変化するため、子どもの体がついていけず「疲れ」「倦怠感」「だるさ」などの症状が出やすくなります。
● 感覚過敏・感覚鈍麻の影響
「雨の日は不調が出やすい」「湿気が高いと落ち着かなくなる」という子どもたち。こうした傾向は、前庭覚や触覚、固有覚などの感覚統合が未成熟な場合に強くなります。
2. どんな不調が起こりやすいのか?
- 頭痛・めまい・倦怠感
- 情緒不安定・イライラ
- 朝起きられない・寝起きが悪い
- 集中できない・授業に身が入らない
- 姿勢が崩れる・転びやすくなる
- 胃腸の不調(便秘・腹痛・食欲不振)
こうした症状は、医学的な疾患として診断がつかないことも多く、「なんとなく体調が悪い」「気分がのらない」といったあいまいな表現になりやすいのが特徴です。
3. 理学療法士の視点:体の“土台”が乱れると心も揺らぐ
● 姿勢の崩れは「バランス系」の感覚と関係
気圧や気温の変化は、内耳にある前庭器や、固有受容器の働きにも影響を及ぼします。
これらは「自分の身体の位置を感じる力」を支えている感覚であり、ここが乱れると、姿勢が保ちにくくなったり、注意のコントロールが難しくなることがあります。
● 睡眠と自律神経はセットで考える
悪天候時に光の量が減ると、体内時計のリズムが乱れやすくなります。
通常、明け方に「コルチゾール(目覚めを促すホルモン)」が分泌され、起床がスムーズになりますが、曇天や雨の日にはこのリズムが狂いやすくなります。
また、日中に光をしっかり浴びることは「セロトニン(気分や覚醒レベルを安定させる神経伝達物質)」の分泌にもつながり、活動意欲や姿勢制御、集中力の維持に役立ちます
4. 生活の中でできる!体調管理のヒント
● 光の刺激を活かす
- 朝起きたらまずカーテンを開け、太陽光を浴びる
- 雨の日でも明るい光(電球やスタンドライト)で脳を刺激
● 体を温める/冷やさない
- 朝食に温かい味噌汁やスープを取り入れる
- 足元を冷やさないようにレッグウォーマーやルームシューズを活用
● “ゆるやかな運動”でスタートする
- 起床後に親子でストレッチやラジオ体操
- ゆらゆら揺れるブランコ、バランスボールでの上下運動
- ジャンプ系の軽いトレーニング(縄跳びなど)も◎
5. 子どもによくある“季節の変わり目”のエピソードと対応
● 「朝から不機嫌」「言うことを聞かない」
→ 感覚的なストレスがたまっている可能性大。
朝のルーティンに「押す・引く・運ぶ」動作を加え、固有受容覚を刺激すると落ち着きやすくなります。
● 「急に転びやすくなった」「歩き方が変?」
→ バランス系の感覚が乱れているサイン。
バランスディスク、平均台などを使って遊び感覚で調整するのもおすすめ。
6. 「発達特性」と「気象・季節」の相互作用に目を向けて
発達に特性のあるお子さんは、とくに気圧・気温・湿度などの環境変化に敏感で、日常の不調につながりやすい傾向があります。
「わがまま」「怠けている」などではなく“環境との相性”という視点を持つことが大切です。
7. まとめ:環境×感覚×運動のバランスを整える
悪天候や季節の変化は、子どもにとって“見えないストレス”になることがあります。
でも、光・温度・動きのちょっとした工夫で、体の「土台」を整えることは十分に可能です。
子どものコンディションは“感覚”と“環境”の相互作用から起きていることが多く、私たち大人が理解しサポートすることが、子どもの1日の過ごしやすさにつながります。
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