発達障害のある子どもが、放課後等デイサービスでのびのびと過ごし、自分らしく成長していくためには、日々の支援や関わり方がとても大切です。
特に「運動が苦手」「体の使い方がぎこちない」といった悩みは多くの保護者や支援者が直面しやすい課題。
本記事では、理学療法士としての専門的な視点から、発達障害のある子ども・気質のある子どもの「運動」や「身体の使い方」に焦点を当て、放課後等デイサービスで役立つ具体的な支援アイディアやサポートの工夫をわかりやすく解説します。
家庭や現場で「どう支えたらいいか分からない…」と感じている方へ、今日から実践できるヒントをお届けします。
■「うちの子、このままで大丈夫?」放課後等デイサービスでの悩み
発達障害と診断を受け、放課後等デイサービス(以下、放デイ)に通う子どもたちが増えています。
親御さんや支援者の多くが、「もっと本人らしく過ごせるには?」「できることを伸ばす支援って何?」と日々悩み、試行錯誤していることでしょう。
特に「運動が苦手」「落ち着きがない」「身体の使い方がぎこちない」といった困りごとがある場合、
どのような支援・介助が子ども本人のためになるのか――迷いは尽きません。
この記事では、理学療法士の視点から、放デイに通う子どもの「運動・身体の使い方」支援について、
具体的なアイディアやアプローチ方法、介助の工夫をわかりやすく解説します。
■「発達障害と運動」の関係~なぜ運動支援が大切なのか?
発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)のある子どもには、身体の動かし方や感覚処理に独自の特徴が見られることが少なくありません。
●発達障害のある子どもに見られやすい運動・身体の特徴
- 転びやすい、バランスを崩しやすい
- 手先や身体の動きがぎこちない
- 筋力や持久力が弱い
- 姿勢が崩れやすい、じっと座っていられない
- 感覚刺激(音・触覚・動きなど)に過敏、もしくは鈍感
これらは「不器用」「運動が苦手」と片付けられがちですが、
実は脳と身体の「感覚統合」の難しさや、身体をうまく使うための経験の不足が背景にあります。
●運動支援のメリット
- 体のコントロール力やバランスが育つ
- 日常生活動作(着替え、食事、移動)が自立しやすくなる
- 集団活動や遊びへの参加がしやすくなる
- 自己肯定感や達成感を味わいやすい
- ストレス発散や情緒安定にも効果
こうした理由から、運動療育は発達障害のある子どもたちの「心と体」の成長に欠かせない支援のひとつです。
■支援方法のアイディアの出し方:まずは「観察」と「気づき」から
●「できない」ではなく、「どうしてそうなるのか?」を考える
まず大切なのは、「できていない」「うまくできない」行動の背景にどんな身体的・感覚的な理由があるかを考えることです。
たとえば――
- ジャンプでバランスを崩す→足の裏の感覚が鈍い?体幹の筋力が弱い?
- すぐ座り姿勢が崩れる→イスが高すぎない?足が床についていない?
- 集団遊びに入りにくい→刺激が多すぎて不安?自分の動きに自信がない?
「なぜ?」と観察し、仮説を持つことが、支援アイディアの第一歩です。
●“小さなできた!”に注目する
「ほかの子と比べて…」ではなく、その子自身の「ちょっとできた」「少し成長した」を支援者同士で共有し合うと、自然とアイディアが広がります。
●多職種・家族との連携を大切に
保護者・PT・OT・ST・教員など、他の専門家と子どもの困りごとや気づきを共有することで、新たな視点やヒントが得られます。
■具体的な支援方法と運動アイディア
ここからは、実際の支援に役立つ運動・活動のアイディアを紹介します。
1. バランス感覚を育てる運動遊び
- バランスボードやクッションの上での立ち・歩行
- 片足立ちゲーム
- ゆらゆらするブランコやロープで遊ぶ
- 「床に線をひいて、その上を落ちないように歩く」ゲーム
→「ぐらぐらしても大丈夫」という経験を重ねることが大切です。失敗も「できた!」の一歩。
2. 筋力・体幹の安定を高める活動
- トンネルくぐりや四つ這い競争
- ジャンプやマット運動、スキップ、ケンケンパ
- ボールを使ったキャッチボールや転がし遊び
→特に体幹を使う運動は「姿勢保持」「座る力」「動きの切り替え」にも直結します。
3. 手指の巧緻性を高める活動
- 新聞紙を丸める・ちぎる・結ぶ
- 洗濯ばさみやおはじき、積み木などの細かい操作遊び
- お箸やスプーンを使った“つまむ・すくう”ゲーム
→手指が不器用な子は「握る・つまむ・引っ張る」など力加減を遊びながら体験できると効果的です。
4. 感覚刺激の調整と安心できる環境作り
- 強すぎる音や光、触感は必要に応じて軽減
- バスタオルやクッションなど「落ち着けるグッズ」を準備
- 静かなスペースでの休憩時間を設定
→感覚が過敏な子も安心して活動できるよう、個々の特性に合わせて工夫を。
5. 「できる範囲から始める」ステップ設定
- いきなり高難度ではなく“成功しやすい課題”からスタート
- 「あと3秒がんばろう」「今日はここまででOK」など、無理のない目標設定
→「できた!」「もっとやってみたい!」が次の意欲につながります。
■介助・サポートのコツ:自立と安心のバランスを大切に
●「やり方の見本」を実際に見せる
言葉だけでなく、動きそのものを大人が見せたり、一緒にやってみたりすることで、イメージが伝わりやすくなります。
●「ちょっとだけ手伝う」感覚
すべてを助けるのではなく、
- 転びそうなときは“そっと支える”
- うまくいったときは“手を離す”
- 声かけで「大丈夫だよ」と伝える
本人の「できた」感覚を大事にしましょう。
●失敗も「経験」のうち
思うようにできない・転ぶ・途中でやめてしまう…それも大切な学びです。
「なんでできないの!」と責めず、「がんばったね」「あと少しだったね」と認めましょう。
●「できない」→「どうすればできる?」を一緒に考える
例えばイスに座っていられない場合、「もっと頑張りなさい」ではなく、
- 足台を置いてみる
- 椅子の高さを調整する
- 5分ごとに立って体を動かす“休憩タイム”を挟む
など、環境やルールを変えてみることで、本人に合った工夫が見つかります。
■支援者・家族が知っておきたい「運動療育のポイント」
●毎日少しずつ“楽しい経験”を積む
運動は「苦手意識」や「できない自信」を生みやすい分野ですが、
「楽しい!」「やってみたい!」という気持ちを大切に、無理なく取り組むことが最大の支援になります。
●「遊び」をベースにした運動
- 「鬼ごっこ」「ボール投げ」「宝探し」など、ルールのある遊び
- 身体のいろいろな部分を動かす“ごっこ遊び”
- 「今日は何回転がれるかな?」「何秒バランス取れるかな?」とゲーム形式に
→大人が「楽しい雰囲気」を作るだけでも、参加意欲がぐっと高まります。
●評価・記録のすすめ
日々のちょっとした成長や、「今日はジャンプが10回できた!」などを記録しておくと、
本人の自信になり、支援者同士の情報共有にも役立ちます。
■まとめ:子どもの「できた!」を一緒に喜ぶ支援を
発達障害のある子どもたちが自分らしく過ごし、可能性を伸ばしていくためには、
本人の特性やペースを尊重しつつ、「運動」や「身体の使い方」をサポートしていくことがとても大切です。
放課後等デイサービスは、家庭や学校とは違う“第三の居場所”として、
さまざまな経験やチャレンジができる大切な場です。
親や支援者が「できない部分」より「できたこと」「頑張ったこと」に目を向け、
工夫やサポートを積み重ねることで、子ども自身も自信や意欲を育んでいきます。
理学療法士としては、体の使い方や運動面からの支援を通して、
「できた!」の体験が一つでも多く増えるよう、これからも知識や工夫を発信していきたいと考えています。
もし、この記事で紹介した内容以外にも「自分の子どものことで具体的に相談したい」「個別の困りごとや支援アイディアがもっと知りたい」という場合は、お気軽に「お問い合わせ」や「公式LINE」からご連絡ください。
一人ひとりに合わせたアドバイスや、具体的な運動・支援の工夫をご提案いたします。
みなさまのお声をお待ちしております。
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