学校に通い始めると、多くのお子さんが「見る力」を使う場面に直面します。
黒板を書き写す、教科書を読む、図を見て解く──これらはどれも「視覚処理」という力が関わっています。
「字は読めるのに、読み飛ばしが多い」
「板書に時間がかかって、授業についていけない」
「計算や図形問題になると極端に苦手意識が出る」
こうした背景には、単なる「集中力」や「やる気」の問題ではなく、視覚情報を処理する力=視覚処理の発達が深く関わっていることがあります。
今回は、そんな視覚処理について解説していこうと思います。
※本記事は医療的診断を行うものではありません。感覚過敏・感覚鈍麻の正式な診断は医師にご相談ください。ここでは、ご家庭や学校で役立つ工夫や考え方の一例を紹介しています。
視覚処理とは?──「見える」だけでは足りない
「視力が1.0なら大丈夫」と思われがちですが、実はそうではありません。
視覚処理とは、目から入った情報を脳で整理・理解し、動作や学習に結びつける力のことです。
つまり、「見えている」ことと「見てわかる」「見て動ける」ことは別物なのです。
視覚処理には次のような要素などがあります。
- 視覚認知:形や文字を正しく見分ける力
- 視覚記憶:見たものを覚えて再現する力(例:黒板を見てノートに書く)
- 視空間認知:位置や距離、方向を理解する力(例:行を飛ばさずに読む)
- 眼球運動:目をスムーズに動かして情報を追う力
- 視覚運動統合:見た情報を手や体の動きにつなげる力
これらがアンバランスだと、学習のあちこちで困りごとが出やすくなります。
学校で現れやすい「困りごと」
1. 板書が苦手
- 黒板を見てからノートに書くまでの間に忘れてしまう
- 一文字ずつ見て書くため、とても時間がかかる
- 書き終わる前に先生が次に進んでしまう
これは「視覚記憶」や「眼球運動」が未発達な場合に起こりやすい困りごとです。
「ちょっと見て覚える」ことが難しいため、効率よく板書ができません。
2. 読みが遅い・読み飛ばしが多い
- 本を読むと行を飛ばしてしまう
- 同じ行を繰り返し読んでしまう
- 文字を一つずつ追うので理解が追いつかない
これは「視空間認知」や「眼球運動」が未熟な場合に多く見られます。
目の動きがスムーズでなかったり、行の位置をとらえるのが苦手なため、読み間違いが起きます。
3. 書字が不器用
- 文字の形が歪んでしまう
- マスの枠からはみ出す
- 漢字を覚えても思い出せない
「視覚認知」が未発達だと形の違いをとらえるのが難しく、「視覚記憶」に課題があると一度覚えた漢字を再現できません。
4. 図形や算数が苦手
- 時計が読みにくい
- 図形を写すのが難しい
- 繰り下がり・繰り上がり計算で桁を見間違える
これは「視空間認知」や「視覚運動統合」に関係する困りごとです。位置感覚の把握が弱いと、数字や図形の扱いに苦手さが出ます。
自宅でできるビジョントレーニング
こうした困りごとをサポートする方法のひとつが ビジョントレーニング です。
これは「見る力」を遊びや練習の中で育てるアプローチで、家庭でも取り入れられます。
眼球運動を鍛える
黒板の板書や読書に必要なのは「目をスムーズに動かす力」です。
- ペン追視:親御さんがペンをゆっくり動かし、お子さんに目だけで追わせる。上下・左右・円などバリエーションを加える。
- 点移動ゲーム:壁に2つ印をつけ、「Aを見て、次にBを見て」と交互に素早く目を動かす。板書の切り替えに役立つ。
視覚記憶を鍛える
短時間で見たものを覚える力は、板書や漢字学習に直結します。
- フラッシュカード:数字や文字カードを数秒見せ、隠してから書いたり言ったりする。
- 間違い探し:微妙な違いを探す遊びで形の記憶力を強化。
視空間認知を育てる
行の位置をとらえる力や図形理解に必要です。
- 迷路遊び:目で道を追いながら手で進める。視線コントロールに効果的。
- 折り紙・ブロック遊び:「右に折る」「上下を合わせる」などで位置感覚を養う。
視覚運動統合を強める
「見て→動く」の連携を高めるトレーニングです。
- 模写練習:簡単な図形から始め、徐々に複雑な図や漢字に発展。
- なぞり線プリント:視線で確認しながら手を動かす練習。
- ボールキャッチ:ボールを見ながらキャッチすることで自然に「見て動く」力を強化。
家庭での工夫のコツ
- 短時間・毎日少しずつ:1日5〜10分で十分。遊び感覚で続ける
- 成功体験を重ねる:「できた!」を感じると意欲が育つ
- 学習に直結させない:宿題とは切り離し、楽しい遊びの一環として取り入れる
専門家の支援が必要なとき
ご家庭で工夫しても改善が見られなかったり、困りごとが学習意欲や自己肯定感に影響している場合は、専門家への相談が有効です。
理学療法士や作業療法士は、
- 眼球運動のスムーズさ
- 姿勢や体幹の安定と「見る力」の関係
- どの場面で困り感が強いか
を分析し、その子に合ったサポートを提案します。
まとめ
- 視覚処理は「視力」とは別に学習を支える大切な力
- 板書や読み書きの困りごとには「視覚認知」「視覚記憶」「視空間認知」「視覚運動統合」などが関与している
- 自宅でもビジョントレーニングを通して「見る力」を育てられる
- 改善が難しい場合は専門家に相談することで、その子に合った支援が見つかる
すこっぴーラボでは、お子さん一人ひとりの特性や動きの特徴を丁寧に見きわめ、その子に合ったサポート方法をご提案しています。
「板書が苦手で困っている」「読み飛ばしが多いけれど原因がわからない」といったお悩みを、一緒に整理していきましょう。
無料相談も受け付けていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
LINEやオンライン面談で、お子さんの困りごとに合わせた具体的なサポートの第一歩をお手伝いします。

 
       
  
  
  
  

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