「ボタンが上手に留められない」「ハサミや箸の使い方がぎこちない」「運動会や体育が苦手」
そんな子どもの“運動の苦手さ”や“手先の不器用さ”に、心配や戸惑いを感じている親御さんや先生は少なくありません。
けれど、子どもの運動発達には“順番”や“土台”があります。
一人ひとりのペースや得意・苦手に寄り添いながら、「今できていること」「これから育てていきたい力」を見つけることが大切です。
この記事では、「微細運動と粗大運動の違い」「発達の土台と順番」、そして家庭や学校でできる具体的なサポートについて、理学療法士の専門性を交えて詳しくお伝えします。
■運動には「粗大運動」と「微細運動」がある
●粗大運動とは?
- 全身を大きく使う運動や動作のこと。
- 例:歩く、走る、跳ぶ、転がる、登る、バランスを取る、ボールを投げる、ジャンプする、ブランコで遊ぶ、など
粗大運動は、「体幹」や「腕・脚」など大きな筋肉を使い、姿勢の安定や全身の協調運動が求められる活動です。
運動の“土台”を作る大切な役割を担っています。
●微細運動とは?
- 手や指などの小さな筋肉を使った繊細な動きやコントロール。
- 例:鉛筆で字を書く、絵を描く、ハサミを使う、ボタンを留める、積み木を積む、箸で食べる、折り紙、ビーズ通し、など
微細運動は、手指の巧緻性や目と手の協調、力加減の調整が重要です。
生活の自立や学習活動、創造的な遊びに欠かせないスキルとなります。
■発達には“順番”がある──土台づくりの重要性
●粗大運動が「土台」になり、微細運動が発達する
子どもの発達は、「大きな動き」から「細かな動き」へと進んでいきます。
この順番を無視して、いきなり“手先の器用さ”だけを求めても、うまくいかないことが多いのです。
発達の流れ(イメージ):
- 首がすわる → 寝返り → おすわり → ずりばい → ハイハイ
- つかまり立ち → 伝い歩き → 一人歩き
- 走る・跳ぶ・登るなどの粗大運動
- 手や指を使った微細運動(物をつかむ、なめる、叩く、ひっぱる)
- より繊細な微細運動(ハサミ、書字、ボタン、箸など)
つまり――「体の中心」や「体全体」を安定して使えるようになってから、手先・指先の巧緻性が発達します。
● “体幹”と“バランス”が土台
体幹(お腹や背中)の筋肉がしっかり働くことで、
- 姿勢が崩れにくい
- 両手が自由に使える
- 座っていられる・机に向かえる
といった基本動作が可能になります。
この土台が弱いと、手先の細かい動きや集中力も続きにくくなります。
■理学療法士が見る「運動が苦手・不器用」な子の特徴
- 椅子に座っていてもすぐ姿勢が崩れる・ふらふらする
- 走ったりジャンプしたりが苦手、転びやすい
- 筆圧が弱すぎる・強すぎる
- 字が雑・枠からはみ出しやすい
- お箸やハサミの使い方がぎこちない
- 服の着脱やボタンが苦手
- ボール投げやキャッチ、縄跳びがうまくできない
こうした特徴が目立つと、「不器用だから…」と思いがちですが、
多くの場合、 “姿勢の安定”や“粗大運動の発達”がまだ十分でないケースが少なくありません。
■発達の順番を大切にしたサポート方法
1. まずは「体を大きく使う遊び」を大事に
- 公園遊び(登る・ぶら下がる・ジャンプする)
- マット運動、平均台、バランスボール
- 縄跳びやボール遊び
- 家の中ならクッションジャンプや、四つ這いレース
粗大運動がしっかり身につくことで、自然と微細運動も安定していきます。
2. 姿勢・体幹を育てる工夫
- 正しい座り方・椅子の高さ調整(足が床につくように)
- バランスボールに座る、お腹や背中の筋肉を使う遊び
- 姿勢が崩れやすい時は、短い時間から集中して座る→徐々に時間を延ばす
3. 微細運動は「遊びの中」で自然に増やす
- 積み木、ブロック遊び、パズル、ビーズ通し
- 粘土やお絵かき、折り紙、シール貼り
- 料理のお手伝い(野菜の皮むき、卵割り、混ぜるなど)
“できない”ことを無理にさせるより、“楽しい!”の中で手先を使う機会を増やすのがコツです。
4. 小さな成功体験を重ねて「自信」をつける
- うまくできたら「すごいね」「前より上手になったね」としっかり認める
- 比べるのではなく、昨日の自分との成長を大切に
- できた!の積み重ねが、やる気や自己肯定感を育てます
■「このままで大丈夫?」の判断ポイントと相談先
●発達の個人差を知る
- 子どもの発達や運動能力には大きな個人差があります
- 必ずしも「みんなと同じペース」でなくてOK
- ただし、日常生活に困難が多い、転びやすさ・不器用さが強い場合は専門家への相談も検討
●専門家に相談できる場
- 保育園・幼稚園、学校の先生や養護教諭
- 小児科、発達外来
- 理学療法士(PT)や作業療法士(OT)がいる発達支援センター、児童発達支援施設
- 市区町村の子育て相談窓口
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■まとめ
運動が苦手、手先が不器用――その背景には「発達の順番」と「土台」の問題が隠れていることが多いです。
- まずは“粗大運動”や“体幹の安定”といった土台をしっかり育てる
- 微細運動は、その土台の上に積み重なる“応用スキル”
- 遊びや生活の中で自然に体と手を使う経験を増やす
- 無理に“練習”させるより、「楽しい!」を大切に
子ども一人ひとりのペースや成長を温かく見守りながら、できることからサポートしていきましょう。
どうしても気になる場合は、専門家への相談も遠慮せず利用してください。
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