結論:身長は「遺伝がメイン」だけど、「環境」で伸びしろは変わる
まず一番最初に押さえておきたいのは、
- 身長はだいたい 70〜80%は遺伝
- 残りの 20〜30%が「環境(栄養・睡眠・運動・病気など)」
と考えられている、という点です。
これは日本人に限らず、海外の双子研究などから一貫して示されている結果です。
つまり、
「親が小柄=子も必ず小さい」ではない
「親が大きい=何もしなくても大きくなる」でもない
ということ。
環境要因を整えることで、「その子が本来持っている伸びしろ」を最大限に引き出すことは十分に可能です。
ここで勘違いしやすいポイントがあります。
「遺伝」は“親の身長だけ”で説明されるものではないということです。
身長に関わる遺伝的要因は、
- 父親・母親だけでなく
- 祖父母
- そのまた前の世代(いわゆる祖先遺伝)
- さらに多数の遺伝子の組み合わせ(多因子遺伝)
によって決まります。
つまり、
親が小柄だから=子どもも必ず小柄になる
という単純な話ではありません。
実際、身長は「200以上の遺伝子」が関与する多因子性の形質です。
そのため、
- 親が小柄でも、祖父母や家系のどこかに高身長の遺伝子があれば大きく育つ可能性は十分ある
- 親が高身長でも、生活環境が整っていないと遺伝的な伸びしろが十分に使われない
という現象が起こります。
遺伝は“可能性(ポテンシャル)”であって、結果ではない。
その可能性をどこまで伸ばせるかは、日々の環境(栄養・睡眠・運動)が大きく関わる。
という理解が最も正確です。
この記事では、その「環境」のうち、特に
- 栄養(食事)
- 睡眠
- 運動
- 妨げになる要因
に絞って、根拠のある範囲でお話ししていきます。
日本の公的データで見る「うちの子の身長」
厚生労働省「乳幼児身体発育調査」
0〜6歳くらいまでの子どもについては、
厚生労働省の「乳幼児身体発育調査」がいちばん基本の資料です。
- 月齢・性別ごとに
- 身長
- 体重
- 頭囲・胸囲
- それぞれの「平均値」と「パーセンタイル(上位◯%)」が示されています。
母子手帳の後ろに載っているような「発育曲線(身長のグラフ)」も、この調査をもとに作られています。
文部科学省「学校保健統計」
幼稚園〜高校生くらいになると、
文部科学省の「学校保健統計調査」の出番です。
- 5〜17歳の子どもを対象に
- 年齢・性別ごとの平均身長・体重
- 肥満傾向児・やせ傾向児の割合
などが毎年公表されています。
ここ数十年のデータを見ると、
- 昭和〜平成の初めにかけて「平均身長は上昇」
- 平成10年前後をピークに、それ以降はほぼ横ばい
という傾向があり、「日本の子どもの身長は、環境による“伸び”が頭打ちになっている」とも解釈できます。
日本小児内分泌学会の成長曲線(0〜18歳)
より専門的な評価には、
日本小児内分泌学会が作成した「標準身長曲線(0〜18歳)」が使われます。
- 年齢・性別ごとに「平均±SD(標準偏差)」が示されており、
- 平均から -2SD 以下 → いわゆる“低身長ゾーン”(全体の約2〜3%)
- -2SD〜+2SD のあいだに、全体の約95%が入る
という考え方で評価します。
じゃあ「うちの子、小さい?」の判断はどうする?

出典:日本小児内分泌学会
- グラフにプロットしたときにいつも -2SD を大きく下回る
- ここ 1〜2 年くらいで 身長の伸びが急に悪くなっている
- 思春期の始まりが周りの子に比べてかなり遅い/早い
といった場合には、小児科や小児内分泌科で相談をした方がよいラインです。
逆に言うと、
- グラフ上で -2SD〜+2SD のあいだに収まっていて
- 成長の“カーブ”が大きく落ち込んでいない
場合は、生活習慣(食事・睡眠・運動)を整えながら様子を見ることが基本になります。
詳しくみるならこちら👇
男子身長体重標準曲線
女子身長体重標準曲線
食事:身長を伸ばす栄養素は「何をどれだけ」摂るかが大事
「背を伸ばす食べ物」と聞くと、
- 牛乳
- 小魚
- ヨーグルト
など「カルシウム」が思い浮かびやすいですが、
実はそれだけでは不十分です。
日本の基準:食事摂取基準と「参照身長・体重」
厚生労働省が定める
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、
- 年齢・性別ごとに「参照身長」「参照体重」が決められ、
- それに見合うだけの
- エネルギー
- たんぱく質
- ビタミン・ミネラル
の必要量が設定されています。
これは、
このくらいの身長・体重で健康に育つには、
だいたいこれくらいの栄養が必要だよ
という国としての「目安」です。
国内研究で重要視されている栄養素
日本人の子どもを対象にした研究や臨床報告を見ると、
「背の伸び」に関して特に重要視されている栄養素は次の通りです。
① たんぱく質:身長の“材料”そのもの
- 筋肉だけでなく、
骨のコラーゲン・ホルモン・酵素など身体の土台そのもの - 低身長の子どもを調べた国内研究では、
たんぱく質の摂取量が明らかに不足している例が多い
という結果も出ています。
※「たんぱく質さえ摂れば背が伸びる」わけではありませんが、
不足すると確実にマイナス方向に働くと考えておくとよいです。
意識したい目安(ざっくり)
- 小学生くらい → 体重1kgあたり 1.0〜1.2g 程度
(例:体重25kgなら 25〜30g/日)
これは、普通の和食+牛乳・肉・魚・卵・豆類をしっかり食べれば十分届く範囲ですが、
偏食が強い子・朝食を抜きがちな子では不足しやすい部分です。
食事量があまりとれない子にはプロテインなどで補助してあげるのも良い選択肢かもしれません。
② 亜鉛:成長ホルモンまわりに関与する「縁の下の力持ち」
- 亜鉛は
- 成長ホルモンの働きを助ける
- IGF-1(成長因子)とも関連
するとされるミネラルです。
- 日本の低身長児を対象にした研究では、
亜鉛摂取量が推奨量を下回っていたという報告もあります。
日本の食事では、
- 肉・魚・卵・大豆製品
- 牡蠣・レバー
- ナッツ類
に多く含まれますが、
現代的な「炭水化物中心+加工食品多め」の食生活だと不足しやすい栄養素です。
③ 鉄:胎児期〜乳幼児期の発育に特に重要
- 鉄は「貧血の予防」というイメージが強いですが、
実は成長期の身長・体重の伸びにも影響します。 - 日本の大規模コホート研究では、
妊娠中のお母さんの鉄状態や貧血が、赤ちゃんの出生体格(小さく生まれるかどうか)に関連する
という報告もあります。
乳幼児〜学童期でも、
- 肉・魚が極端に少ない
- 食欲があまりなく偏食
といった食生活だと、鉄不足→元気が出ない→活動量が減る→食欲も落ちる→成長にマイナス
という悪循環に入りやすくなります。
④ カルシウム・ビタミンD:骨を「硬く・強く」してくれる栄養
- カルシウム:骨の主な材料
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助ける+骨形成に関与
以下の特徴がある子どもでは、ビタミンD不足が問題になることもあります。
- 牛乳・乳製品の摂取が少ない
- 日光を避ける生活・屋内生活が多い
背の伸びそのものというよりは、
「伸びた骨をしっかり丈夫にする」
「将来の骨粗鬆症リスクを下げる」
という意味で重要です。
「身長を伸ばす献立」の考え方(ざっくり)
1日のどこかで、次の3つをそろえるイメージです。
- 主食(ごはん・パン・麺)
→ エネルギー源。これが不足すると、身体が「身長より生きること優先」モードになります。 - 主菜(肉・魚・卵・大豆)
→ たんぱく質+亜鉛+鉄の供給源。 - 副菜(野菜・海藻・きのこ)
→ ビタミン・ミネラル・食物繊維。
そこに、
- 牛乳・ヨーグルト
- チーズ
- 小魚
などを足していくと、カルシウム・ビタミンDのカバーにもつながります。
栄養補助食品について
子どもの成長の基本は、あくまでも 毎日の食事 です。
そのため、
栄養補助食品は「身長を伸ばすもの」ではなく、「不足しがちな栄養を補うためのサポート」
という位置づけで活用するのが大切です。
- 偏食が強い
- 朝食がどうしても食べられない
- 肉・魚・卵などのたんぱく質源が少ない
- 鉄・亜鉛・ビタミンDなどが不足しやすい
といった場合に、
日々の食事を整えたうえで、不足分だけを補助する という使い方がもっとも現実的で、安全な方法です。
以下に、
「不足しやすい栄養素を補う」という目的で使いやすい補助食品を紹介します(※過度な期待は禁物です)。
1. キッズプロテイン(たんぱく質補助)
こんな子に
- 肉・魚・卵が少なく、たんぱく質不足が気になる
- 小食・偏食で主菜が不足しがち
- 朝食の代替として利用したい
理由
日本人の子どもはたんぱく質そのものは比較的足りていますが、偏食が強い子では不足が目立つケースがあります。たんぱく質は骨・筋肉・ホルモンすべての材料なので、食事で不足すると成長に影響します。
2. 鉄・亜鉛入りマルチビタミン
こんな子に
- 肉・魚が極端に少ない
- 食が細い
- 疲れやすい、やる気が出にくい
- 偏食が強く、栄養バランスが不安
理由
日本の子どもは 鉄と亜鉛が不足しやすい と言われています。特に亜鉛は成長ホルモンの働きを助け、鉄は発達・体力に関わります。
3. カルシウム+ビタミンD(骨のため)
こんな子に
- 牛乳・乳製品が苦手
- 日光をあまり浴びない生活(屋内が多い)
- 骨折歴がある/骨の強さが気になる
理由
骨を“伸ばす”栄養ではありませんが、伸びた骨を丈夫にするために確実に必要な栄養素です。特に日本人の子どもは ビタミンD不足が指摘されている ため、食事や日光だけでは足りない場合に補助食品が役立ちます。
4. ビタミンB群・マグネシウム系(食欲・代謝サポート)
こんな子に
- 食欲が落ちやすい
- 疲れやすい
- 活動量が少ない
理由
ビタミンB群は代謝を助け、マグネシウムは筋肉・神経の働きに関わり、睡眠の質にも影響します。ただし「身長アップ」を目的とした直接的なエビデンスは薄めなので、あくまでも“栄養バランス改善”としての位置づけ が安全。
5. 成長期向け完全栄養食品タイプ(ドリンク・ゼリー)
こんな子に
- 朝食を食べられない
- 時間がない家庭
- 栄養バランスが心配
理由
最近は「成長期用ドリンク」のような完全栄養飲料が増えており、ビタミン・ミネラル・たんぱく質・鉄・亜鉛 がバランスよく入っているものもあります。
※「栄養補助食品はこれだけ飲めばOK」ではなく、
食事の代わりではなく、あくまで“補助的に使う”のがポイント
睡眠:成長ホルモンと身長の関係(日本の研究から)
栄養と同じくらい、身長に大きく関わるのが睡眠です。
成長ホルモンは「深い睡眠」のときに多く分泌される
成長ホルモンは寝入り直後〜深いノンレム睡眠のタイミングで多く分泌されると言われています。
「夜更かししても、あとから寝だめすれば同じ」
というわけではなく、
・夜の早い時間に
・毎日ある程度決まったリズムで
・ぐっすり眠る
これが重要です。
日本の大規模研究で分かったこと
日本の大規模な研究では、
1歳半の時点での「夜間睡眠時間」と
3歳時点での「身長」
の関係が解析された研究があります。
結果をざっくり言うと、
1歳半で夜に長く眠っていた子ほど、
3歳になったときに「身長が高い(上位グループ)」に入る割合が高かった
というものです。
もちろんこれは
- 「よく寝れば必ず背が高くなる」という話ではなく、
- 生活リズムが整っていて、栄養・活動量・家庭環境が比較的良い子は、総合的に成長しやすい
という可能性も含みます。
それでも、
- 「夜の睡眠時間が短い」
- 「就寝時刻がどんどん遅くなる」
ことが身長にとってプラスになる証拠は、少なくとも今のところありません。
年齢別の目安睡眠時間
一般的な目安としては、
- 未就学児(3〜5歳):10〜13時間
- 小学生(6〜12歳):9〜12時間
程度が推奨されています。
日本の子どもは、世界的に見ても
- 就寝時刻が遅い
- 睡眠時間が短い
傾向があると言われており、
身長のことを考えるなら「まず睡眠リズムを整える」のは、かなり重要なポイントです。
運動:骨への「いい負荷」が成長を助ける
運動そのものが「身長を直接伸ばす薬」のように働くわけではありませんが、
- 骨端線(成長線)への刺激
- 筋肉量アップ
- 食欲アップ
- 睡眠の質向上
を通じて、間接的に「伸びやすい身体の状態」を作ってくれます。
運動が骨に与える影響
骨は、
- ジャンプする
- 走る
- 登る
といった動きで「ドンッ」と荷重がかかったときに、
“もっと強くならなきゃ”と感じて、骨量が増えたり太くなったりします。
これを「機械的刺激」と言います。
成長期にこうした刺激が十分にあると、
- 骨の密度が高くなる
- 骨折しにくい
- 将来の骨粗鬆症リスクを下げる
などのメリットがあることが、アジアを含む多くの研究で示されています。
日本の子どもは「運動不足」気味
文部科学省の調査では、
- 子どもの体力はピーク時(昭和〜平成初期)に比べて低下傾向
- 外遊びの時間も減少
していることが指摘されています。
つまり、骨にいい刺激が入る機会が昔より減っている可能性が高い。
身長そのものへの影響を正確に数字で示すのは難しいですが、
運動が足りない状態が“続くこと”は、
身長の伸びにとってもマイナスになる可能性が高い
と言えます。
身長のために特におすすめの運動・遊び
「運動」と聞くと、
- スポーツクラブ
- 習い事
を思い浮かべがちですが、
背の伸びを考えるなら“遊びの延長でできる運動”がかなり優秀です。
例:
- トランポリン
- 縄跳び
- 鬼ごっこ(走る・止まる・方向転換)
- ジャングルジム・うんてい・木登り
- 階段の上り下り競争
- かけっこ・リレー
こうした動きは、
- 骨への荷重刺激
- 筋力・バランス
- 持久力
- 脳への感覚入力(前庭覚・固有感覚)
もまとめて刺激してくれるので、
「発達支援」「運動療育」という観点から見ても非常に相性がいい活動です。
また、最近ではオンラインで運動支援をしてくれるサービスなども充実してきているので無料体験だけでもやってみるのは良いかもしれませんね。

どのくらい運動すればいい?
1日60分以上の中等度〜高強度の運動(息が弾むくらいの遊び)
が推奨されています。
「毎日がっつりスポーツ!」でなくても、
- 学校+帰宅後の外遊び
- 休日の公園遊び
を合わせて、1日トータル 60分くらい、しっかり身体を動かす時間があるか
を目安に考えるとよいと思います。
身長が伸びにくくなる要因も知っておこう
「何を足せばいいか」と同じくらい、
「何が“ブレーキ”になりやすいか」を知っておくことも大切です。
① 栄養不足・極端な偏食
- 極端な小食
- 主食+お菓子中心
- 肉・魚・卵・豆類をほとんど食べない
こうした状態が長く続くと、
- たんぱく質・鉄・亜鉛・カルシウム などの不足
- 体重が増えない・減っていく
といった形で、身長成長のブレーキになってしまうことがあります。
② 睡眠不足・夜更かし
- 寝るのが23〜24時以降
- 平日は睡眠不足で、週末に寝だめ
といった生活は、成長ホルモン分泌のリズムを乱し、
「伸びやすい身体」とは逆方向に働く可能性が高いです。
③ 運動不足・座りっぱなし
- 塾・習い事・ゲームでほとんど動かない
- 学校以外はほぼ屋内
という生活が続くと、
骨への刺激・筋力・体力・睡眠の質まで悪影響が出ます。
④ 過度なダイエット・ストレス
特に思春期に多いのが、
- 見た目を気にした過度なダイエット
- 学校・友人・家庭のストレス
などによる食欲低下・睡眠障害です。
ストレスホルモンが高い状態が続くと、
成長ホルモンの働きにも影響する可能性が指摘されています。
⑤ 病気・ホルモンの問題
以下のような場合は、生活習慣だけで解決しようとせず、
小児科・小児内分泌科に相談した方が安全なラインです。
- 成長曲線で -2SD を大きく下回る
- 1年あたりの身長の伸びが極端に少ない
- 周りの同級生が思春期(声変わり・初潮)なのに、
明らかに発育が遅れている - 慢性の病気(心臓・腎臓・消化器など)を抱えている
今日からできる「身長アップ習慣」3つ
最後に、「これだけは意識してほしい」という3つをまとめます。
① たんぱく質+亜鉛+鉄を意識した食事
- 毎食、主菜(肉・魚・卵・大豆)をちゃんと乗せる
- 偏食が強い子には、
食事で足りない分をキッズプロテインやマルチビタミンで補助するのも一案
(※あくまで「不足分のサポート」として)
② できれば「22時までの就寝」を目標に
- 就寝・起床時刻を一定にする
- 寝る2時間前にはスマホ・タブレットを控える
- 寝る前の「ぐずぐずタイム」を短くするために、
ルーティン(入浴→ストレッチ→絵本など)を決める
以前、なかなか寝ない子供に対しての記事も作成したので、参考にしてみてください。
③ 1日60分、息が弾むくらいの運動・遊び
- 鬼ごっこ・縄跳び・サッカー・トランポリンなど、なんでもOK
- 「スポーツの上達」よりも
「楽しく全身を動かす時間を確保すること」が目的
まとめ:身長は「運命」ではなく、「環境」で引き出せる部分がある
- 身長はたしかに遺伝の影響が大きい
- でも、その上で
- 栄養(特にたんぱく質・亜鉛・鉄・カルシウム・ビタミンD)
- 夜の睡眠時間・生活リズム
- 毎日の運動・遊び
を整えることで、その子が持っているポテンシャルを最大限引き出すことは十分に可能です。
一番大事なのは、
「○○さえ飲めば、劇的に伸びる」という魔法を探すのではなく、
小さな生活習慣の積み重ねで“伸びやすい土台”を作っていくこと。
📚 参考文献・データ出典
- 「日本人小児の新しい身長・体重基準値」 日本小児内分泌学会雑誌
- 低身長児のエネルギー代謝と三大栄養素の摂取バランスに関する研究
- 富山大学:富山出生コホート研究(子どもの体格・栄養)


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