「療育で関わるPT・OT・STって、何が違うの?」
「誰に相談すればいいのかわからない…」
療育を調べていると、PT(理学療法士:Physical Therapist )・OT(作業療法士:Occupational Therapist)・ST(言語聴覚士:Speech-Language-Hearing Therapist)という言葉を目にする機会が増えます。
しかし、それぞれの違いや役割は意外と知られていません。
この記事では、
- PT・OT・STの専門性の違い
- 療育現場での具体的な役割
- なぜ連携が重要なのか
を、根拠を重視しながらわかりやすく解説します。

療育に関わるPT・OT・STの共通点
まず大前提として、PT・OT・STはいずれも国家資格を持つリハビリ専門職です。
共通している点は以下の通りです。
- 子どもの発達段階を踏まえて評価する
- 医学・神経発達・学習の知見を基盤に支援を考える
- 「できない行動」ではなく背景要因を重視する
- 家庭・学校・多職種と連携しながら支援する
つまり、単なる訓練ではなく、
子どもが生活や学習に参加しやすくなることを目的に関わります。
PT(理学療法士)の役割|姿勢・運動・身体の土台を支える専門家
PTの専門分野
姿勢・運動・バランス・移動能力
療育現場でよくある支援対象
- 姿勢が崩れやすい
- じっと座っていられない
- 転びやすい、動きがぎこちない
- 運動が苦手、疲れやすい
PTの特徴的な視点
PTは、
- 筋緊張
- 関節の動き
- 重心移動やバランス
- 前庭覚・固有感覚などの感覚入力
といった身体の基礎的な仕組みを評価します。
👉「集中力がない」「落ち着きがない」と見える行動の背景に、
姿勢保持や身体の安定性の未発達が隠れていないかを考えるのがPTの強みです。
OT(作業療法士)の役割|生活・学習・遊びを支える専門家
OTの専門分野
作業(=その子にとって意味のある活動)
療育現場でよくある支援対象
- 書く・切る・貼るなどが苦手
- 着替えや食事に時間がかかる
- 不器用さが目立つ
- 感覚過敏・感覚鈍麻
OTの特徴的な視点
OTは、
- 感覚統合の視点
- 手指操作・目と手の協調
- 課題設定や環境調整
を組み合わせて支援します。
👉「できる・できない」ではなく、
どうすれば参加できるかを具体的に調整するのがOTの専門性です。
ST(言語聴覚士)の役割|ことばとコミュニケーションの専門家
STの専門分野
言語・コミュニケーション・食べる機能
療育現場でよくある支援対象
- 言葉がなかなか増えない
- 発音が不明瞭
- 指示が通りにくい
- 会話のやりとりが苦手
STの特徴的な視点
STは、
- 言語理解と表出
- 音韻・発声発語
- 非言語コミュニケーション(視線・表情・ジェスチャー)
などを評価します。
👉「話せない」ではなく、
伝える手段・理解の仕方を多面的に捉えるのがSTの強みです。
PT・OT・STの違いを比較すると
| 職種 | 主な専門 | 主な困りごと |
|---|---|---|
| PT | 姿勢・運動・バランス | 座れない、転びやすい |
| OT | 生活動作・感覚・不器用さ | 書けない、作業が遅い |
| ST | ことば・コミュニケーション | 話せない、伝わらない |
現場で感じるPT・OT・STの専門性の違い(PTの視点から)
ここまでPT・OT・STそれぞれの役割を整理してきましたが、
実際の現場では、教科書的な説明だけでは語りきれない「専門性の違い」も感じます。
以下は、理学療法士(PT)として現場に関わる中で感じた実体験的な印象です。
※あくまで一職種からの視点であり、職種の優劣を示すものではありません。
PTは「身体の構造と動き」を深く理解する専門職
PTは、
- 筋肉
- 神経
- 関節
- 姿勢や動作
といった解剖学的・運動学的な理解を強く基盤にしている職種だと感じています。
特に、
- 動作分析
- 筋の働きやタイミング
- 代償動作の見極め
といった「機能面の評価と整理」に強みがあります。
そのためPTの役割をイメージすると、
👉 身体の土台をつくる・整える専門家
という感覚が近いと考えています。
OTは「その人の生活全体」を見るオールラウンダー
OTは、
- 食事
- 更衣
- 学習
- 遊び
- 趣味活動
など、その人が行う作業すべてを支援対象とする職種です。
支援範囲が非常に広く、
👉 オールラウンダーな専門職
という印象を持っています。
PTが「身体機能」に注目する場面でも、
OTは
- その人の背景
- 環境
- その人なりのやり方
といった点を強く意識して支援を組み立てている印象があります。
「機能をどう高めるか」よりも、
「その人に合ったやり方で、どう参加できるか」
を重視している点がOTの大きな強みだと感じます。
STはPT・OTでは補いきれない領域を深くカバーする専門家
STは、
- 言語
- 音声
- 嚥下(飲み込み)
- コミュニケーション
といった分野の専門職です。
PT・OTと比べると、
- 基本動作
- 全身の解剖学・運動学
を扱う場面は少ない印象があります。
しかしその分、
👉 PT・OTには理解や介入が難しい領域を専門的に深くカバーしている
という印象が非常に強いです。
特に、
- 会話の成り立ち
- 伝える・理解するプロセス
- 食べる・飲み込む機能
は、STの専門性が不可欠な領域です。
専門性の違いは「役割分担」ではなく「補完関係」
現場で感じるのは、
PT・OT・STはそれぞれ「できること」「見ている視点」が違うからこそ、
互いの専門性を補い合っているという点です。
- PT:身体の土台
- OT:生活・活動への参加
- ST:ことば・コミュニケーション
このどれか一つだけでは、
子どもや利用者の全体像を捉えることは難しいと感じています。
なぜ療育では「連携」が重要なのか?
子どもの発達の困りごとは、一つの分野だけで完結しないことがほとんどです。
例:
- 姿勢が不安定(PT)
→ 手先が安定しない(OT)
→ 発話ややりとりに影響(ST)
このように、
身体・活動・ことばは相互に関連しています。
👉PT・OT・STがそれぞれの専門性を持ち寄ることで、より立体的で現実的な支援が可能になります。
まとめ|専門性の違いは「分業」ではなく「協働」
- PT・OT・STは目的は同じ
- 視点と得意分野が異なる
- 違いがあるからこそ連携が必要
療育において大切なのは、
「どの職種が正解か」ではなく、
子どもにとって必要な視点が揃っているかです。



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