子どもの成長や発達を支援するうえで、「脳の働き」や「発達の順序」について理解することはとても大切です。
しかし、脳の仕組みや専門用語は難しそう…と感じている親御さんや教育関係者も多いのではないでしょうか。
この記事では、脳がどのような構造になっているのか、それぞれがどんな役割を持ち、発達の過程でどのように機能が広がっていくのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。
子ども一人ひとりの「今」と「これから」を支えるヒントに、ぜひご活用ください。
■脳は“役割分担”で働いている
脳は「大脳」「間脳」「脳幹」「小脳」「基底核」「辺縁系」などいくつかの部分に分かれ、それぞれがさまざまな機能を担当しています。
●主な脳の構造と役割
- 大脳
脳の中で最も大きな部分で、「思考」「記憶」「言語」「運動」「感覚」など多彩な機能を司っています。特に前頭葉は“実行機能”とも呼ばれ、計画を立てたり、注意をコントロールしたりする役割を担います。 - 間脳
体温・食欲・睡眠などの自律神経の調整や、ホルモン分泌のコントロールに関わっています。 - 脳幹
呼吸や心拍、意識レベルなど、生命を維持するために欠かせない機能を司る、最も原始的な部分です。 - 小脳
運動のバランスやタイミング、細かな動きの調整を担います。歩く、走る、手先を使うなどの運動に欠かせません。 - 基底核
動きをスムーズに始めたり止めたりする、運動の“調整役”です。不随意運動やパーキンソン病などでも知られています。 - 辺縁系
感情のコントロールや記憶の形成など、“こころ”の働きに大きく関わります。
※もっと詳しく分ければきりがないほど多くありますが、まずはざっくり理解することが重要です!
■発達の順序は「土台から階層的」に進む
脳の発達は、いきなり“複雑なこと”から始まるわけではありません。
●生命維持・感覚運動からスタート
まずは脳幹や間脳など“生命を守るための機能”、呼吸・体温調節・睡眠など、基礎的な働きがしっかり育ちます。
次に、身体を動かす「運動」や「感覚」につながる小脳や基底核が活発になります。
手を伸ばす・物をつかむ・バランスを取る…こうした一つひとつの経験が、脳のネットワークを育てていきます。
●次第に「認知」や「社会性」へ
土台が整ってくると、言葉・記憶・空間認知・感情のコントロールなどが発達し、
最後に「前頭葉」を中心とした“実行機能”(計画する・工夫する・行動を調整する)が高まってきます。
このように、脳の発達は段階的かつ階層的に進みます。
■「脳の可塑性」―子どもは“伸びしろ”だらけ
子どもの脳には「可塑性(かそせい)」と呼ばれる“変化する力”があります。
これは、経験や環境、リハビリなどによって神経のつながりが新しく生まれたり、別の回路で機能を補ったりできる性質のことです。
●年齢や時期によって可塑性の大きさが違う
乳幼児期や学童期は特にこの可塑性が高く、新しい経験や挑戦が脳に大きな影響を与えます。
大人になってからでも可塑性は残りますが、年齢が若いほど再構築や回復が起こりやすいとされています。
●発達支援・リハビリの現場でも
理学療法や発達支援の分野では、脳の可塑性を活かして、「できないこと」を「できること」に変えるための関わりやトレーニングが行われています。
■発達支援で大切にしたい脳の理解
●一人ひとり“脳の発達の進み方”は違う
「同じ年齢でも、できること・苦手なことが違う」のは、ごく自然なことです。
脳の発達スピードや経験の積み重ねには個人差があります。
●構造と順序、可塑性をふまえたアプローチを
- まずは「土台づくり」(生活リズム・感覚運動の経験など)が最重要
- いきなり高い課題よりも、“今の段階に合った経験”を積み重ねる
- 苦手なことも「経験」と「環境」でカバーできることが多い
- 年齢に関わらず、新しいチャレンジは脳にプラスの刺激になる
■親や教育者ができること
- 「今どこが得意で、どこが苦手かな?」と日々の様子を見守る
- 生活や遊び、運動の機会をたくさん用意する
- 失敗や苦手があっても「脳には変化の力がある」と信じる
- 必要に応じて専門家と連携し、一人ひとりに合った支援を
■まとめ
脳は驚くほど多彩で、柔軟なはたらきを持っています。
発達の順序や可塑性を理解することで、子どもの「今」と「これから」を支えるためのヒントがたくさん見えてきます。
難しい専門用語にとらわれず、「脳は経験で変わる」「土台をしっかり作る」「一人ひとりに合った支援が大切」というポイントを心にとめて、日々の発達支援に役立ててください。
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