今回は[運動シリーズ]の縄跳びについて。前回の走るについても読んでいない方がいたらそちらも是非見てみてください。
「縄跳び、どうしても引っかかっちゃう」「跳びながら腕をうまく回せないみたい…」
小学生になって「縄跳び」に取り組む時期になると、できる子との差が目立ちやすくなり、親御さんの中には子供の発達が心配になるケースが多くなってきます。
でも実は、縄跳びは見た目以上に高度な全身運動。発達や感覚の土台が未成熟な子どもにとって、苦手に感じるのは珍しくありません。
今回は、理学療法士の視点から「縄跳び」の動作を分解しながら、苦手さの背景と支援方法をわかりやすくお伝えします。
◆ なぜ縄跳びは難しいのか?〜6つの要素に分けて考える〜
縄跳びを1人で跳ぶには、以下のような動作や感覚の連携が必要になります。
【1】リズム感とタイミング
縄を回す・跳ぶという一連の動作は、一定のリズムに乗せて繰り返す必要があります。
リズム感が未成熟だと、タイミングがずれて引っかかってしまいます。
【2】ジャンプ力と両足の協調性
縄跳びでは「両足ジャンプ」を連続して行います。
そのためには、股関節・膝・足関節を同時に使って、反動を効率よく生み出す動きが求められます。
このジャンプのパターンがまだ身についていないと、足がうまく上がらなかったり、片足ずつになってしまったりします。
【3】上肢(腕)の回旋動作と下肢の協調
腕で縄を回す動作(回旋)は、肩関節・肘関節・手首を協調的に使う必要があります。
特に「縄を回すタイミング」と「ジャンプするタイミング」が一致しないと、毎回引っかかってしまいます。
【4】体幹の安定性
ジャンプと腕の動きを同時に行うには、胴体のブレが少なく、軸が安定していることが大切です。
体幹が弱いと、腕や足の動きがバラバラになり、リズムが取りにくくなります。
【5】視覚・空間認知
自分の周りで動く縄の位置やスピードを「見て感じる」能力も欠かせません。
縄の位置を把握し、次に通るタイミングを予測できる必要があります。
【6】固有受容感覚・前庭感覚
縄跳びは「自分の体の位置」「力の入れ方」「バランスの取り方」といった感覚統合の能力も大きく関わります。
ジャンプ中の浮遊感や着地の衝撃が苦手な子も少なくありません。
◆ 苦手な子によく見られる姿勢や動きの特徴
- 縄を上手く回せず、腕だけでバタバタしてしまう
- 足がほとんど地面から離れず、ジャンプになっていない
- 1回目は跳べるが、2回目以降リズムが取れない
- 体がグラグラと揺れて姿勢が保てない
- 足がクロスしたり、着地でバランスを崩す
- 縄のスピードがバラバラで、引っかかりやすい
こうした動きの背景には、「部分的な発達の偏り」や「運動経験の少なさ」があることが多いです。
◆ 家庭でできる!縄跳びの前段階のサポート遊び
縄跳びが難しいと感じるお子さんには、いきなり跳ばせるのではなく、土台を育てる遊びから始めましょう。
【1】両足ジャンプ練習(その場でぴょんぴょん)
→ 足首・膝・股関節の連動を育てます。
最初はクッションの上やトランポリンで跳ぶと、跳ね返りが感じやすくなり効果的です。
【2】腕回し練習(縄なしで)
→ 縄を持たずに、肘を伸ばした状態で「縄を回す真似」をします。
左右同時に動かす・肩の可動域を意識するなどがポイントです。
【3】ジャンプと手拍子を合わせる
→ 跳びながら手を叩くことで、「上下の運動と上肢の動作」を合わせる練習になります。
“跳ぶ・止まる”のメリハリをつけてリズム感も養えます。
【4】縄をまたぐ・くぐる・引く
→ 縄に対して“怖さ”や“不快感”がある子には、まず縄に慣れるところから。
またぐ、くぐる、引っ張るなど、触れる機会を増やします。
【5】1回跳びだけでOKからスタート
→ 初めから連続で跳ぶのは難しいもの。
まずは1回だけ跳んで縄を止める→また1回、という形で「成功体験」を増やしていきましょう。
◆ 親子でできる工夫・サポート方法
- 後ろから親が一緒に腕を支えて回す:リズムを体で覚えるきっかけに。
- 縄を短く持って回しやすくする:長すぎると絡みやすく、動きが不安定になります。
- 回すタイミングで「いち・に・さん」と声をかける:リズムを言葉で伝えると、動きが一致しやすくなります。
- 動画を見せて真似させる:視覚的に動作のイメージを持たせるのも有効です。
◆ 子どもが「できた!」と感じるステップを大切に
縄跳びの練習は、どうしても「できる・できない」に目が向きがち。でも大切なのは、「自分の体をコントロールできる楽しさ」「少しずつ上達している実感」を感じられることです。
縄跳びができるようになるタイミングには個人差が大きいです。
身体の成長、感覚の発達、経験の積み重ねが揃ったときに「急に跳べるようになる」ことも珍しくありません。
◆ おわりに
縄跳びが苦手に見えるのは、単に運動能力の問題ではなく、感覚や認知、身体の土台の発達と関係していることが多いのです。
家庭でできるちょっとした運動や遊びを通して、子どもが「縄跳び=楽しい!」と思えるようになると、それだけで大きな一歩です。
無理なく、その子のペースで「できる」を育てていきましょう。
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