「見てわかる・聞いてわかる・動いてわかる」──感覚タイプ別・伝え方と学び方の工夫

感覚

「説明してもなかなか伝わらない」
「見せたらすぐできた!」
「話を聞くより、体を動かすと理解が進む」

こんな経験はありませんか?

実はそれ、感覚優位性(dominant sense)の違いが関係しているかもしれません。
人は誰でも、情報を「目」「耳」「体」など、使いやすい感覚チャンネルを通して受け取っています

前回の記事では、感覚優位性とは「どの感覚を主に使って世界を理解しているか」という個性であるとお伝えしました。
今回はその中でも特に大切な、視覚・聴覚・体感覚の3つのタイプ別に、理解の仕方と支援の工夫を紹介します。


1. 視覚優位(Visual Type)──「見てわかる」タイプ

🔹 特徴

  • 話を聞くより、見た方が理解が早い
  • 絵・図・写真・文字情報が得意
  • 手順やルールを“見える化”すると落ち着く
  • 口頭での説明だけだと混乱することがある

視覚優位の子は、視覚情報で整理・記憶する力が高いタイプです。
言葉で長く説明するより、見本や図を使う方がスッと理解できます。

🔹 家庭・授業での工夫

場面支援の工夫
支度や準備手順カードや写真を貼る。「①着替え → ②歯みがき → ③荷物チェック」などを図示
学習板書やノートに色分け、イラストを使って整理。文字だけでなく「視覚で区別」できる工夫を
指示やルールピクトグラム・ポスター・スケジュール表などで見える形にする
新しい動作の習得実際に見本を見せてから説明する。ジェスチャーや実物を併用すると効果的

🔹 伝え方のポイント

  • 「こうしてね」より「これを見てね」
  • 話すときは目線を合わせてジェスチャーで補助
  • 注意やお願いも「見える形」で残す(紙・カードなど)

👉 “見える手がかり”を増やすことで、理解と安心がぐっと深まります。


2. 聴覚優位(Auditory Type)──「聞いてわかる」タイプ

🔹 特徴

  • 話の内容をすぐ理解できる
  • 音やリズムで覚えるのが得意
  • 周囲の声や音に敏感なことがある
  • 同時に複数の人が話すと混乱しやすい

聴覚優位の子は、耳からの情報処理が得意です。
口頭での説明や会話を通じて理解を深め、音の抑揚やリズムを手がかりに記憶する傾向があります。

🔹 家庭・授業での工夫

場面支援の工夫
指示を出すとき一度にたくさん話さず、短く区切って伝える。「まず〇〇してね」「終わったら△△しよう」など順番を意識
学習音読・歌・リズムを取り入れる。言葉で説明を補足すると理解しやすい
集中が切れやすいとき周囲の音(テレビ・会話)を減らして、落ち着ける環境にする
記憶のサポート声に出して確認、リズムで覚える、クイズ形式にする

🔹 伝え方のポイント

  • 明るい声・一定のトーンで安心感を
  • 重要な言葉はゆっくり・繰り返す
  • 同時に話さず、一人ずつ・一つずつ伝える

👉 聴覚優位の子には、「耳で安心できる環境」が学びの基盤になります。


3. 体感覚優位(Kinesthetic Type)──「動いてわかる」タイプ

🔹 特徴

  • 体を動かしながら学ぶと理解が深まる
  • じっと聞く・見るだけの学習は苦手
  • 手を動かしたり、体を使って試すのが好き
  • 動きながら考えることで集中しやすい

体感覚優位の子は、「体で感じること」を通して情報を整理します。
言葉や図だけでなく、実際に“やってみる”ことで理解が進むタイプです。

🔹 家庭・授業での工夫

場面支援の工夫
学習積み木・ブロック・カードなど、手を使って理解できる教材を使う
新しい概念の学び実際に体を動かして体験する(例:算数なら物を並べて数える)
長時間の学習こまめに動く休憩を入れる。「伸びをする」「ジャンプを3回」など短時間でOK
遊びや療育体を使う遊びを通して言葉やルールを学ぶ(例:色鬼・リズム遊びなど)

🔹 伝え方のポイント

  • 「やってみよう」「一緒に動いてみよう」と体験に誘う
  • 触覚・重さ・バランスなどを感じられるように工夫する
  • 正解を言葉で教えるより、「感じて理解する」時間を大切にする

👉 体を使うことそのものが“学び”になります。
動きの中で理解が深まり、自信が育ちます。


4. どのタイプにも共通すること

実際の子どもたちは、どれか1つだけが優位というより、
複数の感覚を組み合わせて使っていることが多いです。

たとえば、

  • 見て理解しながら、声に出して覚える(視覚+聴覚)
  • 聞いたことを動きで確認する(聴覚+体感覚)

このように、感覚をつなげて使う力(感覚統合)が発達していくことで、
学びや行動がよりスムーズになります。


5. 「伝え方を変える」と、子どもは変わる

子どもがうまく理解できないとき、
「集中していない」「やる気がない」と感じてしまうことがあります。

でも、それは「情報の入り口」が合っていないだけかもしれません。

大人が伝え方を少し工夫するだけで、
子どもの表情がパッと明るくなる瞬間があります。

それは、
「この方法ならわかる!」という安心感を得たときです。

その積み重ねが、
“できる力”を育て、自己肯定感を支えていきます。


■ まとめ

  • 感覚優位性とは、「情報をどう受け取るのが得意か」という脳の個性
  • 視覚優位:見える手がかりを活かす
  • 聴覚優位:言葉・リズム・声かけを工夫する
  • 体感覚優位:動いて体験する中で理解を深める
  • 子どもによって得意な感覚の組み合わせは異なる

伝え方を変えれば、子どもの理解も変わる。
それが、感覚の特性を活かした支援の第一歩です。


すこっぴーラボでは、理学療法士の視点から、
子どもの発達や感覚特性に合わせた支援・学び方の工夫を発信しています。

「うちの子はどんな感覚が得意なんだろう?」
「家庭や学校での伝え方を工夫したい」

そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。
無料相談も受け付けております。

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参考

Çetin, Y. (2009). Teaching VAK-abulary. 

Bang, P., & Igelström, K. (2023). Modality-specific associations between sensory differences and autistic traits. Autism, 27, 2158 – 2172.

Paek, S., Hoffman, D., & Black, J. (2021). Shaping the sensory experience in digital environments: modality, congruency, and learning. Interactive Learning Environments, 31, 5665 – 5681.

Lana, V., Royan, A., & Fazal, N. (2016). Kinesthetic Learning Modalities’ Approach in Understanding Concepts of Hypersensitivities Immunological Reactions.. The Journal of Immunology.

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