小学校に入ると、「文字を書く」「はさみを使う」「定規で線を引く」など、手先を細かく使う動作が一気に増えます。
これらの動作を支えているのが「微細運動能力(びさいうんどうのうりょく)」です。
しかし実は、手先の動きだけを練習しても上達しにくいことがあります。
なぜなら、微細運動をスムーズに行うためには、姿勢の安定・体幹の力・目と手の協調といった「体の土台」が欠かせないからです。
この記事では、理学療法士の視点から、微細運動を伸ばすための“土台づくり”と、家庭でできる具体的な工夫をわかりやすく解説します。
微細運動と粗大運動については以前も記事にしているので参考にしてください👇
 
微細運動とは?
微細運動とは、手や指の小さな筋肉を使って物を操作する動きのことです。
例えば次のような動作が含まれます。
- 鉛筆やクレヨンを持って線を書く
- はさみで紙を切る
- ビーズを通す
- ボタンを留める
- お箸で食べ物をつまむ
これらの動きは、「指先の力」だけでなく、体全体の安定性や目と手の連動といった要素にも支えられています。
微細運動を支える3つの土台
① 姿勢と体幹の安定
鉛筆を持つ手を安定させるためには、背中やお腹の筋肉(体幹)がしっかり働く必要があります。
体幹が弱いと、次のようなサインが見られます。
- 書いているうちに体が机にくっつく
- 椅子からずり落ちる
- 肩や肘に力が入りすぎて疲れる
このような場合、まずは「体を支える力」を育てることが大切です。
家でできる体幹あそび
- バランスボールやクッションの上でバランス遊び
- うつ伏せで絵本を読む(背筋トレーニング)
- クマ歩きやトンネルくぐり、雑巾がけあそび
書く練習よりも前に、体の安定づくりを意識してみましょう。
② 肩・腕の動きの自由さ
手先の細かい動きは、肩や肘のスムーズな動きに支えられています。
肩の可動性が低いと、手先に余計な力が入り、ぎこちない動作になりやすいです。
おすすめのあそび
- 紙飛行機を飛ばす・ボール投げをする
- 大きな模造紙にお絵描きをする(全身で描く)
- タオル引き合いっこ・ロープ引き遊び
こうした「粗大運動(そだいうんどう)」は、微細運動の“下支え”になる重要な要素です。
③ 目と手の協調(視覚運動協調)
目で見た情報をもとに手を動かす力のことを「視覚運動協調」と言います。
線の上をなぞる、文字を枠内に書くなど、学習には欠かせない力です。
発達が未熟だと、
- 字が枠からはみ出す
- 字の大きさがそろわない
- はさみで線に沿って切れない
 といった困りごとが出やすくなります。
家でできる視覚運動あそび
- パズルや迷路
- ブロックあそび(LEGO®など)
- ぬりえ・点つなぎ・まね描き
- ビーズ通しやアイロンビーズ
「見て → 動かして → 確認する」という一連の流れを、遊びの中で楽しく繰り返すことがポイントです。
家庭でできる!微細運動を育てる工夫
◆ 生活の中で「手を使う」機会を増やす
特別な教材がなくても、日常生活そのものが最高のトレーニングになります。
- ボタンを留める・ファスナーを閉める
- 洗濯物をたたむ
- おにぎりを握る・野菜をちぎる
- ペットボトルのキャップを開ける
- お箸で食べ物をつまむ
「お手伝いあそび」として取り入れると、手先の器用さがぐんと伸びます。
◆ 感覚を育てる「ねんど・スライムあそび」
指先で感じる感覚刺激は、動きのコントロール力を育てます。
- 粘土をこねる
- スライムをのばす
- 小麦粉ねんどで形を作る
こうした「感触あそび」は、机に向かう前の“準備運動”としても効果的です。
◆ 姿勢を整える環境づくり
姿勢が崩れやすい子の場合、机と椅子の環境を見直すことも大切です。
チェックポイント:
- 足の裏が床につく椅子を使う
- 肘が軽く机の上に乗る高さに調整
- 背中が背もたれに軽く触れる姿勢を意識
また、座る前にジャンプやストレッチをして体をほぐすと、集中しやすくなります。
まとめ
微細運動能力は「手先の器用さ」だけでなく、
姿勢の安定・体幹の力・視覚と動きの協調といった体の土台に支えられています。
焦らず、遊びや生活の中で少しずつ育てていくことが、
「書く」「作る」「集中する」といった学習動作のスムーズさにつながります。
「字を書くのが苦手」「はさみがうまく使えない」などの気づきは、成長のチャンス。
お子さんの“今の発達段階”に合った関わりを見つけていくことが大切です。
すこっぴーラボでは、理学療法士が専門的な視点でお子さんの姿勢・体幹・手の使い方を丁寧に分析し、
お子さん一人ひとりに合った「微細運動の土台づくり」をサポートしています。
「字を書くのが苦手」「姿勢が崩れやすい」「工作を嫌がる」など、気になることがある方は、
オンラインまたは公式LINEでの無料相談をご利用ください。
お子さんの“動きの特徴”を一緒に見きわめながら、家庭でできるサポート方法をわかりやすくお伝えします。
 
  
  
  
  

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