「ちゃんと歩けているように見えるけど、実は足の使い方が気になる…」「靴の選び方、何が正解かわからない」
実は、「歩く」という動作は、ただの移動手段ではなく、脳や身体の発達、さらには学びや感情の安定に深く関わる大切な土台です。
この記事では、理学療法士の視点から、子どもの発達における歩行の重要性、足の使い方、靴選び、そして足育(あしいく)の基本について、科学的な根拠も交えて詳しく解説していきます。
【1】歩行は「脳の発達」に深く関係している
私たちの脳は、運動によって刺激され発達していきます。
特に「歩行」は、全身を使いながら前進するダイナミックな運動であり、脳幹、小脳、大脳皮質まで広く刺激します。
歩くことで刺激される脳の領域
- 前庭系(平衡感覚):バランスをとりながら歩く動作が、体の位置感覚や重力認識を育てます。
- 固有受容感覚:関節や筋肉からの情報が、姿勢制御や自己認識を高めます。
- 前頭前野:リズムよく歩くことで、思考や集中力に関わる前頭前野が活性化されます。
論文からの根拠
- Hillman et al. (2008) によれば、有酸素運動を含む歩行が、学齢期の子どもの実行機能(集中力・抑制・記憶)を向上させることが示されています。
- 歩行リズムが一定している子どもほど、読解力や書字の正確性が高いという研究報告もあります(Grissmer et al., 2010)。
【2】歩行の“質”が大切! ただ歩いているだけでは足りない
「歩く」という行為も、動作の質(フォーム)によって脳への刺激が大きく変わります。
よくある歩き方の乱れ
- つま先が開いている(いわゆる“ガニ股”)
- 膝を伸ばしきって歩く
- かかとから着地できない
- 歩行リズムがバラバラ
こういった歩き方は、バランス感覚や筋力のアンバランス、さらには感覚統合の未熟さを示していることがあります。
理学療法士の視点では、これらは「発達の土台の不安定さ」のサインでもあり、姿勢の崩れ、学習時の集中力低下、転倒しやすさにもつながります。
【3】「足の使い方」で運動能力も情緒も変わる
足裏は、無数の感覚受容器が集中しています。
正しく足を使うことで、姿勢制御・体幹安定・空間認識といった、あらゆる身体能力のベースが育まれます。
足の役割
- 足裏の感覚:地面を感じ取ることで身体の位置を脳にフィードバック
- 足趾(あしゆび)の把持力:立位バランスやジャンプ・走る力に直結
- アーチ構造:衝撃吸収や姿勢保持に重要
もし足のアーチが未形成だったり、浮き指(地面につかない足指)があったりすると、脳が受け取る情報が乏しくなり、集中力低下や多動傾向といった“困り感”が現れることもあります。
【4】靴選びの基本:発達を支える“道具”としての靴
足が未熟なうちは、正しい足の動きを促す靴が必要です。靴は“足の補助具”と考えましょう。
良い靴のポイント
- かかとがしっかりしている(ヒールカウンターが硬い)
- つま先が適度に反る(トゥスプリングあり)
- 足にフィットしている(大きすぎない)
- 靴底が硬すぎない・滑りにくい
- ベルトやマジックテープで固定できる
安価な靴やキャラクターものは、これらを満たしていないことが多く、足の機能を妨げてしまう可能性も。
また、「おさがり」は、他人の足の癖が形に残っているため、できるだけ避けるのが理想です。
【5】「足育」で学習・感情面のトラブルを予防できる
「足育(あしいく)」とは、足の発達を促す環境づくり・関わりを意識すること。
小学校時代からの取り組みで、学習意欲・集中力・運動機能の向上が期待できます。
家庭でできる足育の工夫
- 裸足で過ごす時間をつくる(安全な屋内・芝生など)
- 足の指でタオルをつかむ「タオルギャザー」遊び
- 家族で一緒に“歩きに出る”時間を作る
- 正しい靴の履き方を習慣化(かかとをトントン→ベルトを締める)
教室や園でもできる工夫
- 着席中の足の裏がしっかり床につく椅子・机の高さ調整
- 姿勢を整えるフットレストの設置
- 体幹を使った運動(バランス運動・クロス歩行)を活動に取り入れる
【6】まとめ 〜「足元の安定」は、心と学びの安定へ〜
足は、単なる移動のためのパーツではありません。足元が安定すれば、姿勢が整い、体が安定し、集中力・思考力・情緒の安定にもつながるのです。
逆に、足の不安定さが「集中できない」「座っていられない」「転びやすい」など、日常の困り感の背景に潜んでいることもあります。
「歩き方」や「足の使い方」を改善することで、姿勢や行動、さらには学習や対人関係の安定につながるケースは多く報告されているようです。
今一度、お子さんの足元を見つめ直し、「発達を支える歩き方」への第一歩を踏み出してみてください。
コメント