「スマホばっかり見てて大丈夫かな?」「ゲームの後は姿勢がぐにゃっと崩れる」
そんな風に感じたことはありませんか?
今やスマホやタブレットは、子どもの世界にも当たり前に存在します。
そして、子育ての毎日では「ちょっと動画を見せて、その間に家事をしたい」という瞬間、たくさんありますよね。
それは仕方のないことですし、悪いことではありません。
ただ“長時間”や“毎日ずっと”になると、子どもの発達に影響を及ぼす可能性もあることが、最近の研究で分かってきました。
このブログでは、理学療法士の視点から、
- スクリーンが子どもの体や感覚、脳にどう影響するのか
- 発達をサポートする工夫や環境作り
をお伝えしていきます。
1. どのくらい見せたらいいの? スクリーンタイムの目安
● 世界基準のガイドライン(WHO・日本小児科学会)
年齢 | スクリーンタイムの推奨時間 |
---|---|
2歳未満 | 使用を避けるべき |
2〜5歳 | 1日1時間未満、保護者と一緒に |
6歳以上 | 1日2時間以内(学習時間を除く) |
ただしこれは「理想的な目安」であり、生活の中で調整しながら付き合っていくことが大切です。
2. 子どもの姿勢に起きている変化
● 画面を見る姿勢=“止まった姿勢”が続く
スマホやゲームを使っているときの多くは、
- 前かがみの姿勢
- 肘を曲げて手を固定
- 足を動かさない
という、極端に動きの少ない姿勢です。
● 長時間続くと…
- 【ストレートネック】:首の自然なカーブが失われ、頭痛や肩こりの原因に
- 【猫背・巻き肩】:胸筋ばかりが縮み、背中の筋力が低下
- 【体幹の不安定】:座っていてもグラグラしやすい状態に
▶ 生活の工夫
- 座る場所を変える(ソファ→バランスボール、床座→正座)
- 視線の高さを調整(タブレットはクッションや台に置く)
- 20分見たら3分体を動かす(ジャンプやストレッチなど)
3. 感覚の発達が偏るとどうなる?
私たちの脳は「動きながら感じる」ことで成長していきます。
スマホの世界は視覚と聴覚に頼りがちですが、
- 前庭感覚(バランス)
- 固有感覚(力の加減)
- 触覚(触れた感覚)
など、実際に体を使わなければ育たない感覚が育ちにくくなります。
● 感覚の偏りによる困りごと
- 落ち着きがない・集中できない
- 力加減が難しい(強く叩く・持てない)
- 感覚に鈍い/敏感すぎる(靴下が気になる、抱っこを嫌がる)
🔍 Ayres, A.J.(1979)『感覚統合の発達と支援: 子どもの隠れたつまずきを理解する 』
リンク
▶ 生活の工夫
- 朝は布団の中でゴロゴロ運動(回る・前後左右に動く)
- 昼間に押す・引く・登る遊びを取り入れる
- スクリーンタイム前に体を動かしてからにする(逆に集中しやすくなる)
4. 脳の働きへの影響とは?
● 視覚刺激が強すぎると…
画面の中では、次々と映像や音が変化します。
これは一見“楽しい”のですが、脳の「報酬系」が過剰に刺激されることで、
- 実生活での活動に飽きやすい
- もっともっと刺激が欲しくなる
といった状態に陥りやすくなります。
● 注意機能・自己コントロールの低下も
- ゲームのしすぎ → 衝動的行動・注意の持続困難
- 夜のスマホ使用 → 睡眠の質が低下 → 翌日の集中力低下
5. 「使わせない」ではなく「使い方を整える」
育児の現場ではこんなこと、よくあります
- 料理中に静かにしててほしいから動画を見せる
- 電車や病院の待ち時間にスマホで気をまぎらわせる
これは悪いことではありません。
むしろ、「ルールを決めて」「身体とのバランスをとって」使うことが大切です。
6. 理学療法士がすすめる!日常でできるスクリーンとの付き合い方
◆ スクリーン前後に取り入れたい動き
- 前:体を揺らす・ジャンプ・階段上り下り
- 後:ストレッチ・目の体操・水分補給
◆ 週末にできる「感覚のリセット」
- 公園での遊具(ブランコ、うんてい)
- 山登りや芝滑り
- 落ち葉遊びや砂遊び(触覚を刺激)
◆ おすすめルールの例
- 「ごはんの前は動画ストップ」
- 「20分見たら5分体を動かす」
- 「家族全員、夜8時以降はスマホをおやすみ」
まとめ:スクリーンと、子どもの発達はつながっている
スクリーンとの付き合い方は、子どもたちの身体・感覚・脳の働きすべてに関係しています。
でも、無理にやめさせるのではなく、日常の中でできる工夫でバランスを取ることが、今の時代に合ったスタイルです。
「ゲームや動画が悪い」とするのではなく、
「どうすればその影響を和らげ、よりよく発達できるか」を意識していくこと。
それが、子どもたちの元気な体と心を育む第一歩です。
【参考文献】
- World Health Organization(2019)Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep
- Ayres, A.J.(1979)Sensory Integration and the Child
- Radesky, J. S. et al.(2016)Mobile and interactive media use by young children: Pediatrics
- 長谷川 毅(2020)デジタル機器と子どもの発達 小児科臨床
- Canadian Paediatric Society(2017)Screen time and children
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