スクリーンと子どもの体 〜スマホ・ゲームが姿勢や感覚に与える影響と、できる工夫〜

感覚

「スマホばっかり見てて大丈夫かな?」「ゲームの後は姿勢がぐにゃっと崩れる」
そんな風に感じたことはありませんか?

今やスマホやタブレットは、子どもの世界にも当たり前に存在します。
そして、子育ての毎日では「ちょっと動画を見せて、その間に家事をしたい」という瞬間、たくさんありますよね。
それは仕方のないことですし、悪いことではありません

ただ“長時間”や“毎日ずっと”になると、子どもの発達に影響を及ぼす可能性もあることが、最近の研究で分かってきました。

このブログでは、理学療法士の視点から、

  • スクリーンが子どもの体や感覚、脳にどう影響するのか
  • 発達をサポートする工夫や環境作り
    をお伝えしていきます。

1. どのくらい見せたらいいの? スクリーンタイムの目安

● 世界基準のガイドライン(WHO・日本小児科学会)

年齢スクリーンタイムの推奨時間
2歳未満使用を避けるべき
2〜5歳1日1時間未満、保護者と一緒に
6歳以上1日2時間以内(学習時間を除く)

🔍 WHO(2019)『Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age』

ただしこれは「理想的な目安」であり、生活の中で調整しながら付き合っていくことが大切です


2. 子どもの姿勢に起きている変化

● 画面を見る姿勢=“止まった姿勢”が続く

スマホやゲームを使っているときの多くは、

  • 前かがみの姿勢
  • 肘を曲げて手を固定
  • 足を動かさない
    という、極端に動きの少ない姿勢です。

● 長時間続くと…

  • 【ストレートネック】:首の自然なカーブが失われ、頭痛や肩こりの原因に
  • 【猫背・巻き肩】:胸筋ばかりが縮み、背中の筋力が低下
  • 【体幹の不安定】:座っていてもグラグラしやすい状態に

▶ 生活の工夫

  • 座る場所を変える(ソファ→バランスボール、床座→正座)
  • 視線の高さを調整(タブレットはクッションや台に置く)
  • 20分見たら3分体を動かす(ジャンプやストレッチなど)

3. 感覚の発達が偏るとどうなる?

私たちの脳は「動きながら感じる」ことで成長していきます。
スマホの世界は視覚と聴覚に頼りがちですが、

  • 前庭感覚(バランス)
  • 固有感覚(力の加減)
  • 触覚(触れた感覚)
    など、実際に体を使わなければ育たない感覚が育ちにくくなります

● 感覚の偏りによる困りごと

  • 落ち着きがない・集中できない
  • 力加減が難しい(強く叩く・持てない)
  • 感覚に鈍い/敏感すぎる(靴下が気になる、抱っこを嫌がる)

🔍 Ayres, A.J.(1979)『感覚統合の発達と支援: 子どもの隠れたつまずきを理解する 』

▶ 生活の工夫

  • 朝は布団の中でゴロゴロ運動(回る・前後左右に動く)
  • 昼間に押す・引く・登る遊びを取り入れる
  • スクリーンタイム前に体を動かしてからにする(逆に集中しやすくなる)

4. 脳の働きへの影響とは?

● 視覚刺激が強すぎると…

画面の中では、次々と映像や音が変化します。
これは一見“楽しい”のですが、脳の「報酬系」が過剰に刺激されることで、

  • 実生活での活動に飽きやすい
  • もっともっと刺激が欲しくなる
    といった状態に陥りやすくなります。

● 注意機能・自己コントロールの低下も

  • ゲームのしすぎ → 衝動的行動・注意の持続困難
  • 夜のスマホ使用 → 睡眠の質が低下 → 翌日の集中力低下

🔍 Radesky et al.(2016)『Mobile and interactive media use by young children: The good, the bad, and the unknown』Pediatrics


5. 「使わせない」ではなく「使い方を整える」

育児の現場ではこんなこと、よくあります

  • 料理中に静かにしててほしいから動画を見せる
  • 電車や病院の待ち時間にスマホで気をまぎらわせる

これは悪いことではありません
むしろ、「ルールを決めて」「身体とのバランスをとって」使うことが大切です


6. 理学療法士がすすめる!日常でできるスクリーンとの付き合い方

◆ スクリーン前後に取り入れたい動き

  • 前:体を揺らす・ジャンプ・階段上り下り
  • 後:ストレッチ・目の体操・水分補給

◆ 週末にできる「感覚のリセット」

  • 公園での遊具(ブランコ、うんてい)
  • 山登りや芝滑り
  • 落ち葉遊びや砂遊び(触覚を刺激)

◆ おすすめルールの例

  • 「ごはんの前は動画ストップ」
  • 「20分見たら5分体を動かす」
  • 「家族全員、夜8時以降はスマホをおやすみ」

まとめ:スクリーンと、子どもの発達はつながっている

スクリーンとの付き合い方は、子どもたちの身体・感覚・脳の働きすべてに関係しています。
でも、無理にやめさせるのではなく、日常の中でできる工夫でバランスを取ることが、今の時代に合ったスタイルです。

「ゲームや動画が悪い」とするのではなく、
「どうすればその影響を和らげ、よりよく発達できるか」を意識していくこと。
それが、子どもたちの元気な体と心を育む第一歩です。


【参考文献】

  • World Health Organization(2019)Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep
  • Ayres, A.J.(1979)Sensory Integration and the Child
  • Radesky, J. S. et al.(2016)Mobile and interactive media use by young children: Pediatrics
  • 長谷川 毅(2020)デジタル機器と子どもの発達 小児科臨床
  • Canadian Paediatric Society(2017)Screen time and children

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