「朝が弱くて毎日バタバタ」「ぼーっとしていて動かない」「忘れ物が多い」。
小学生のいる家庭で、朝の“グダグダ問題”に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
でも、これらは“やる気”や“性格”のせいではないかもしれません。
実は、脳と体の目覚め方にはコツがあるのです。
この記事では、理学療法士の視点から、「脳と体をスイッチオン」するための簡単な朝習慣を、科学的根拠とともに解説します。
保護者・教育関係者の方にもわかりやすく、家庭ですぐに始められる方法をご紹介します。
1. 朝がグダグダな理由とは?
まだ脳と体が“起きていない”だけ
朝、目は開いていても、脳の覚醒レベルが低い状態では、行動がスムーズにいきません。
とくに子どもの脳は発達段階にあり、感覚や自律神経の切り替えが未熟なため、目覚めが遅れやすいのです。
脳の発達に関してはこちらの記事も参考にしてください👇
子どもの脳はどう育つ?~成長に合わせた「困りごと」の理解とサポート~
自律神経の切り替えが苦手な子も多い
人の体は、寝ている間は「副交感神経(リラックス)」が優位に。
朝になると「交感神経(活動)」に切り替わる必要があります。
この切り替えがスムーズにいかないと、朝から動けない、集中できない、といった問題が起こります。
2. 朝の行動が“1日全体のパフォーマンス”を左右する
近年の研究では、「朝のタスク完了がその後の認知機能や集中力に良い影響を与える」ことが示されています。
米国の心理学誌『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載された研究(Baumeister, 2010)では、
朝に意思決定やタスクを完了させた人は、午後以降のパフォーマンスが高く、感情の安定も見られたと報告されています。
また、筑波大学の研究(Hirata et al., 2019)では、朝に日光を浴びることで体内時計がリセットされ、集中力や学習効率が高まることも明らかになっています。
3. 朝の体と脳を目覚めさせるルーティン【理学療法士おすすめ】
どれも5〜10分でOK!家庭で手軽にできる習慣です
【1】カーテンを開けて“朝日を浴びる”
- 起きたらすぐに窓際に行き、朝日を浴びる
- 雨や曇りの日でも、自然光に近づけるだけでもOK
👉 光刺激は、視交叉上核(脳内時計)を刺激し、メラトニンの分泌を止めて覚醒を促進します。
【2】簡単な「タスク」を終える(例:ベッドメイキング)
- 起きたら布団を畳む・ベッドを整える
- 洗顔、着替え、手早い食器並べ など
👉 「小さな成功体験」から脳の報酬系が活性化し、やる気や集中力を引き出します(Dopamine System)
コレに関しては私も幼少期、母親からよく言われました(笑)
【3】脳と体をつなぐ「クロスタッチ運動」
- 右手で左ひざ、左手で右ひざを交互にタッチ
- リズムよく10〜20回行う
👉 大脳半球間の連携(左右の脳をつなぐ)を促し、集中力や姿勢制御に有効です。
【4】“ジャンプ”+“ねじり”で前庭刺激
- その場でジャンプしながら体を左右にねじる
- もしくは、階段を軽く上り下りする
👉 前庭感覚と固有感覚を刺激することで、脳幹の覚醒レベルが向上。
姿勢・バランス・注意力の向上につながります。
【5】朝ストレッチ+深呼吸
- 大きく体を伸ばす → 肩回し → 背中を丸める
- 「3秒吸って、6秒吐く」腹式呼吸を数回
👉 呼吸と筋肉を動かすことで、自律神経が整い、情緒の安定や集中準備が整う。
4. “朝習慣”を無理なく続けるコツ
- 親が一緒に楽しむ・見本になる
- 「やらなきゃ」より「やって気持ちいい!」を重視
- できたらシールやスタンプで可視化すると達成感UP
- 音楽やタイマーを使ってリズムをつけるのもおすすめ
5. こんな子には特に効果的!
- 登校前に不安が強くなる子
- 朝から姿勢が崩れやすい・集中できない子
- 指示に対して動きがゆっくりな子
- 感覚刺激への過敏・鈍麻がある子
→ 感覚統合や運動発達の観点からも、朝の覚醒を助ける習慣は必須です。
6. 学校でも活かせる「モーニングルーティン」
学校現場でも、朝のラジオ体操やジャンプ運動を取り入れるクラスの方が、
1時間目の集中力や学習態度が良好だったという報告もあります(文部科学省 生活習慣調査, 2020)。
保健室や特別支援教室などでも、「動いてから学習」の流れは注目されています。
まとめ:朝の習慣が、子どもの“1日”をつくる
朝は、子どもの体と脳が「スイッチオン」する大切な時間。
ちょっとした運動や感覚刺激、そしてタスク完了の成功体験によって、
集中・姿勢・感情コントロールなど、学習と生活の土台が整います。
親子で楽しみながら、毎朝の「目覚めルーティン」を作っていきましょう。
習慣形成についてもっと知りたいからはこちらを👇
【ジェームズ・クリアー式】複利で伸びる1つの習慣──理学療法士が語る「行動が続く仕組み」
【参考文献】
- Baumeister, R. F. et al. (2010). Self-Control and Ego Depletion. J Pers Soc Psychol.
- Hirata, Y. et al. (2019). The effect of morning light exposure on circadian rhythm and cognitive performance. Chronobiology International
- 文部科学省「生活習慣と学習の関連に関する調査」(2020)
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